「岸辺露伴」は高橋一生だけじゃないッ!! ジャンプ小説レーベル「JUNP J BOOKS」の傑作短編

「岸辺露伴」は高橋一生だけじゃないッ!!

「岸辺露伴短編小説集」からあえて1本を選ぶなら?

 「岸辺露伴短編小説集」に収録されている小説群も、すべてこの、「露伴が人一倍強い好奇心のせいで、日常と非日常の狭間に潜む怪異と戦うことになる」という原作の基本パターンを踏襲して書かれている。

 いずれの作品も力作だが(お世辞抜きで、“外れ”はないといっていいだろう)、お薦めの作品をあえて1作だけ選ぶとしたら、第1巻(『岸辺露伴は叫ばない』)所収の「くしゃがら」(北國ばらっど)ということになるだろうか。

 同作は、(タイトルにもなっている)「くしゃがら」という「出版禁止用語」をめぐる不気味な物語であり、2020年にNHK総合で放送された実写ドラマ版(主演・高橋一生/脚本・小林靖子/演出・渡辺一貴)の第1期でも、「第2話」として映像化されたため、「テレビで観た」という方も少なくないだろう。

 注目すべきは、ドラマ版の企画段階で、本作が原作の1本として選ばれたという点だ。なぜなら、その時点ではまだ、「ジョジョ」本編のエピソードも含め、荒木飛呂彦が描いた“岸辺露伴の物語”は他にもいくつもあったのである。その上であえて選ばれたということは、それほどまでに、この「くしゃがら」というノベライズの完成度が高いということの証でもあるだろう。

 また、その後、ドラマ版が第4期(第9話)までと、映画版が2本作られたいまでは、実写化されていない荒木の漫画作品は少なくなってきており(『岸辺露伴は動かない』の単行本に収録されている作品に限っていえば、現時点で残りあと5作)、今後は、「くしゃがら」以外のノベライズが、再びドラマの原作として選ばれることもあるだろう。

 いずれにせよ、実写版(ドラマ・映画)と同じように、このノベライズのシリーズも、まだまだ“増殖”中である。漫画、アニメ、ドラマ、映画、そして小説と、メディアのジャンルを越えて広がり続ける“岸辺露伴の物語”に、今後も期待したい。

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