『劇場版チェンソーマン レゼ篇』は珠玉の青春アクションアニメ映画に? 原作の見どころを読み解く

スティーブン・スピルバーグ監督の映画『ジョーズ』の成功以降、サメ映画は低予算映画のトレンドとなっており、近年はサメさえ出ていれば何でもありという独自の進化を遂げている。そんなサメ映画のテイストと、トビー・フーバー監督の『悪魔のいけにえ』を筆頭とするホラー映画やアクション映画に対するオマージュがふんだんに盛り込まれた『チェンソーマン』の相性はバッチリで、低予算映画のB級テイストが、MAPPAのリッチなアニメに落とし込まれた時に、どのような映像表現が生まれるのか注目している。
このように、甘酸っぱいラブストーリーがいつの間にか、サメ映画的なアクション活劇に変わっているのがレゼ篇の面白さだが、本作を読んでいて思い出すのは1980年代に週刊ヤングマガジンで連載されていたすぎむらしんいちの『サムライダー』(講談社)や望月峯太郎(現・望月ミネタロウ)の『バイクメ~ン』(同)といった青年漫画が持っていた独自の疾走感だ。
『チェンソーマン』は近年の少年漫画の中では珍しい下品で野蛮な作品で、少年の中にある行き場のない性欲と暴力衝動を描いている。その意味で作中の描写は少年誌よりは青年誌に近く、物語が進むに連れてリミッターがどんどん外れて何でもありの展開となっていくのだが、レゼ篇はそんな『チェンソーマン』の青年漫画っぽさが、もっとも強く現れたエピソードだったと言えるだろう。
きっと『レゼ篇』は、珠玉の青春アクションアニメ映画に仕上がるはずだ。劇場公開が楽しみである。






















