電撃小説大賞の遺作『妖精の物理学』、夢枕獏「キマイラ」シリーズ、『薬屋のひとりごと』5月ラノベは話題作が多数

電撃小説大賞の遺作『妖精の物理学』

 ミステリー的な雰囲気を漂わせて興味を惹く作品が、サトウとシオ『読心探偵・大葉香夏子は頭がわるい~心が読めるから真犯人特定までは余裕ですけど証明方法が全然わかりません~』(GA文庫)。主人公の探偵は心が読める女子高生というから有能そうだが、どうやら大バカらしく心が読めても証明する方法を思いつけずにいる。そこは助手の暦ちゃんの助けも借りて解決に挑む。証拠を積み上げ推理し犯人に迫るものとは違った面白さがありそうだ。5月15日発売。

 同じミステリーでもこちらはもう少しシリアス。アニメ化も決まったシリーズの最新刊『姫騎士様のヒモ6』(電撃文庫)と同時発売の白金透『あなた様の魔術【トリック】はすでに解けております ―裁定魔術師レポフスキー卿とその侍女の事件簿―』(電撃文庫)は、魔術師たちの探偵であり判事であり処刑人という役割を担う裁定魔術師(アービトレーター)として、魔力を持たない侍女のリネットとレポフスキー家の当主マンフレッドが就いて、罪を犯す魔術師たちに迫る。ファンタジー世界の上で繰り広げられる推理を楽しめそう。5月10日発売。


 新作から興味をそそられる作品を幾つか。第12回集英社ライトノベル新人賞のジャンル部門〈佳作〉となった衣太『あの子は可愛い男の子。』(ダッシュエックス文庫)は、女装のコスプレイヤーとして活躍していた木和田博人が、長年活動と共にしてきた男装コスプレイヤーの正体が、同じ学校でギャルの頂点に君臨する綾瀬彩だと知って始まる新たな関係に注目。5月23日発売。

 語部マサユキ『魔法×科学の最強マシンで、姫も異世界も俺が救う!』(角川スニーカー文庫)は、宇宙でロボットを駆って戦っていたバサラが、最終決戦で爆発に巻き込まれて死んだと思ったらファンタジー世界に転移していて、そこで出会った王女を助けロボットの力を使って魔物や魔族と戦い始める。ロボット対ドラゴンのような戦いも登場。無双の力を持つロボットに魔法の力も加わった時にどれだけの強さを見せるのかに注目。5月1日発売。

 キャラクター小説系からは、NHKの大河ドラマ『べらぼう』で生涯が描かれる蔦屋重三郎とも関連がありそうなゆうきりん『大江戸恋情本繁昌記 巻ノ弐 ~蔦重と意地の本~』(集英社オレンジ文庫)が登場。現代から江戸時代にタイムスリップした女性編集者の小桜天が主人公のシリーズで、天の同居人が書いた本の歌舞伎化や、BL本作りに挑む天の周囲で既に死んだはずの蔦屋重三郎の目撃情報が出始める。現代の編集センスで江戸時代のベストセラー作りに挑む出版ものの面白さに加え、『べらぼう』をきっかけに盛り上がる蔦重に関するエピソードも楽しめそうな1冊だ。5月19日発売。

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