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古賀史健の『なぜ人は自分を責めてしまうのか』評:カオスでしかない世界を説明する「極限の言葉」とは

言葉にならないことを大事にしなさい
お父さんやお母さんがあんなことをするのは、お母さんがいつも泣いているのは、家族が喧嘩ばかりしているのは、いきなり怒鳴られたり叩かれたりするのは、みんな自分のせいなんだ。自分さえいなければ、この(カオス的な)世界は秩序を取り戻すんだ——。なんと万能で、なんと恐ろしい、呪いの言葉だろうか。
では、そんな呪いの言葉を内在化してしまった子どもたちに活路はあるのか。著者はここで、わかりやすい特効薬を提示するような真似はしない。ただ長年の経験から、グループカウンセリングにその光明を見出す。そんなグループカウンセリングにおける注意点として語られる言葉を引用して、本稿を終わりにしたい。
言葉にならないことを大事にしなさいと。ぜんぶは、言葉に表せないんです。言葉はいつも不足してるし、いつも過剰なんです。ぴったりではない。だから、なんか嫌だとか、なんかつらいとか、そういう感覚を大事にしていくということですね。
言葉を取り戻し、感情を取り戻し、そして自分を取り戻せ。ぼくの耳には、著者がそう訴えているように聞こえた。自責の念に苦しむ読者はもちろん、その自覚を持たない読者にこそ読んでほしい一冊だ。
■書誌情報
『なぜ人は自分を責めてしまうのか』
著者:信田さよ子
価格:968円
発売日:2025年3月10日
出版社:筑摩書房
『さみしい夜のページをめくれ』
著者:古賀史健
価格:1760円
発売日:2025年3月19日
出版社:ポプラ社
























