Kindle売れ筋ランキング1位 漫画『VTuber草村しげみ』配信者とリスナーの理想的な関係とVTuberのリアルな魅力

オタクの鑑? 最古参ファン・ナナシノのスタンス
さて、そんなトップVTuberの草村しげみから熱烈な愛を向けられているのが、視聴者が彼一人しかいない「同接1」の時代から応援してきた最古参ファン・ナナシノだ。
しげみの魅力に世間が気づいたことによろこびを感じながら、「遠くに行ってしまった」と一抹の寂しさも覚える日々。面白いのは、彼が「勘違いファンにだけはならんようにしないと」と自制し、自分のコメントに歓喜するしげみを「視聴者個人を構うのはよくないんじゃない?」と諌めるなど、各方面に配慮しながら熱心な応援を続けていることだ。
ファンは推しに認知されたいし、認知されればより特別な関係になりたいと思うものだが、ナナシノは常に適切な距離感を取ろうと考えており、他の視聴者から疎まれるどころか、しげみの配信を盛り上げる重要なピースとして尊重されている。
実際の配信界隈でも“名物リスナー”は存在するが、VTuberがビジュアルだけで人気を広げることがないように、スーパーチャットの金額だけでその地位を獲得できるわけではない。やはりコメントから透けて見える人間性や発想の面白さが重要で、ナナシノの場合、何気ないコメントから醸し出される「配慮」や「純粋な応援」の感情が、特別扱いに嫉妬を生まない要因にもなっている。
二人の関係を見守るリスナーたち=読者の存在
本作は草村しげみとナナシノという、お互いに本当に顔も知らないネットの付き合いでありながら、人間味を感じる二人が主役だが、見逃せないのはPCモニターに流れるコメントとして登場する、名もなきリスナーたちの存在だ。
上述の通り、しげみの関心を独占するナナシノに悪感情を持つリスナーは目立たず、むしろ二人にもっと関係性を深めてほしいと考える「ナナ草くっつけ派」も存在するほど。これはそのまま読者が抱く感覚で、共感を生む仕掛けになっている。
VTuberとリスナーという捻れた関係の恋はどこへ向かうのか。いち読者&リスナーとして、物語の続きを楽しみにしたい。