Kindle売れ筋ランキング1位 漫画『VTuber草村しげみ』配信者とリスナーの理想的な関係とVTuberのリアルな魅力

「ガンガンpixiv」等で配信中のラブコメ漫画『VTuber草村しげみ~遠くに行ってしまった気がした推しが全然遠くに行ってくれない話~』(さかめがね)の第1巻が4月22日に発売され、AmazonのKindle売れ筋ランキングで1位になるなど話題を呼んでいる。
🌿【感謝】🌿
AmazonのKindle売れ筋ランキングでVTuber草村しげみが「1位」を獲得しました!
ひとえに皆様の応援のおかげです!ありがとうございます!
Amazonでよく見る「ベストセラー1位」のタグが付きました…!凄い…! pic.twitter.com/La94Bf9fnr— さかめがね@「鬱サキュ」単行本発売中! (@sakamegane) April 22, 2025
『VTuber草村しげみ』は「次にくるマンガ大賞 2024」のWebマンガ部門3位を受賞した注目作。配信チャンネルの登録者数が130万人を超える人気VTuber「草村しげみ」と、その最古参ファンである「ナナシノ」の“推し合い”が微笑ましく、殺伐としがちな側面もある配信カルチャーのひとつの理想像と言えるような、平和な内容が魅力的だ。同時に、現実のシーンと重ねてリアリティを感じる描写が多いのも、読者を惹きつける要因だろう。リアルとバーチャルを行き来する「VTuber」というモチーフをうまく使い、現代的なコミュニケーションや推し文化の捻れた面白さを伝えている。
VTuber草村しげみの“リアル”な魅力
草村しげみはネットを超えて雑誌やテレビに登場することも珍しくなく、ライブをすれば会場は即満員、配信を始めれば同時視聴者数は1万人を超えるというトップVTuberだ。
もともと歌が上手だったわけでも、配信映えする高いゲームスキルを持っていたわけでもない。そんな彼女の人気ぶりに説得力があるのは、推したくなる「人間性」がきちんと感じられるからだ。VTuber界隈で「中の人(魂)」の話をするのは基本的に重大なマナー違反だが、いくらビジュアルや声が魅力的でも“中身”がともなっていなければ人は集まらない。その意味で、草村しげみにはVTuberとしての「設定」に収まらない純粋さと妄想力があり、他のリスナーそっちのけで最古参ファンのナナシノに執着し続ける自由さがいい味を出していて、多くの人を惹きつけるに足る人間的な面白さがあるのだ。
VTuberには他の惑星から来たお姫様もいれば、悪魔や吸血鬼もいる。この文化に親しんでいない人は、彼らの活動はそれぞれのキャラクター設定に則ったロールプレイであり、俳優がある役柄を演じるように、人間性はさほど関係ないのではないかーーと思うかもしれない。しかし、VTuberが主戦場にしているのは時に長時間に及ぶ日々のライブ配信だ。毎日のように何時間もリスナーと触れ合い、配信中の寝落ちも珍しくないような状況で、「演技」を貫徹するのは至難の業。アニメのキャラクターのように厳密にブランディングされているように見えて、実は生身の人間性が人気につながっている面は大きく、一見際立った取り柄がなさそうな草村しげみが多くのリスナーに愛されていることは、現実に置き換えてもリアリティがある。
本作が「ニコニコ漫画」で配信された際のコメントは、「作品」に対する感想というより「草村しげみの配信」を盛り上げようとする内容のものが目立ち、実在するVTuberのファンになった気分で楽しんでいる読者も多いようだ。こういう遊びが成立するのは、現実とバーチャルを横断するVTuberというモチーフの強みかもしれない。