推し活の新たな潮流? 広告費用をファンたちが支払い宣伝する「センイル広告」がブームに

推し活ファンが広告を出す文化がトレンドに

■公共交通機関にとっては広告枠の新たな活用方法か

 推し活の一環として、ファンが駅に“応援広告”を掲出する――そんな事例が増えている。池袋駅や秋葉原駅の通路に、VTuberやアニメキャラクターが大きく描かれた広告が掲示されていることがある。新曲やライブの広告かと思いがちだが、これは公式が掲示しているのではない。あくまでも、ファン有志が自発的に貼り出しているのだ。

 その内容は、VTuberの周年を記念したり、なかには声優の誕生日を祝ったものもある。こうした応援広告は“センイル広告”とも呼ばれ、韓国発祥とされる広告文化だ。ちなみに、“センイル”とは韓国語で“誕生日”を意味し、芸能人などの誕生日を祝う目的で始まったとされる。実際に芸能人が広告を見に行くケースもあり、ファンにとってはたまらないだろう。

 例えば、『ラブライブ!スーパースター!!』の澁谷かのん役で知られる伊達さゆりも、ファンが原宿駅に掲示した広告を見に行った様子をXに投稿している。この広告は9月30日の伊達の誕生日を祝ったもの。『ラブライブ!スーパースター!!』ゆかりの地である原宿駅のほか、伊達が宮城県出身ということにちなみ、仙台駅にも同様に広告が掲示された。

■掲示費用はファン同士で負担

 鉄道会社や掲示する駅によって費用はまちまちだが、6~10万円近い金額と言われている。通常の広告と比べたら割安かもしれないが、相応に費用は掛かる。その費用は、いったいどのように集めるのだろうか。過去に、ある声優の誕生日を祝う広告を貼り出したことがあるファンに話を聞いた。

「費用は、ファン有志がSNSなどのネットなどを通じて集めています。私の場合、もともと、推しの声優のライブにフラワースタンド(通称:フラスタ)を贈ったりしていたので、その時とほぼ同じメンバーで広告を貼り出した形になります。SNSで話題になるし、推しのもとに届くので感無量ですよ」

 まさに推しへの熱意の結晶といえるが、費用がかかるし、貼り出される期間も短い。グッズを買うほうが有意義なのでは、などと思ってしまうのだが、どうなのだろうか。

「費用はみんなで割り勘にしていますし、そんなに高いとは思いませんよ。コミケの同人誌で合同誌を作るような感じです。それに、ファン同士の結束力を高めることもできますし、何より駅を行き交う人たちが眺めてくれるのは嬉しいですよ。一種の“布教活動”としての意味合いもありますね」

 こうした応援広告に対する規定は、声優の事務所によっても異なる。無断で写真を使用することはできない際は、メンバーのなかで絵が描ける人がイラストを描き下ろしたりと、著作権的な面への配慮も必要だ。そういった手間をかけるのも「推しを推したいから」こそ。様々な形で広がる推し活文化だが、推しに迷惑をかけないのは大前提といえるだろう。

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