生きづらさを抱える少女が宇宙飛行士コマンダーを目指す マンガ大賞2025『ありす、宇宙までも』が描く希望

全国の書店員を中心に、各界のマンガ好きが今1番推したい漫画を選ぶ「マンガ大賞2025」。見事大賞に輝いたのは、日本人初の女性宇宙飛行士コマンダーを目指す少女の成長を描いた『ありす、宇宙までも』(売野機子/小学館)。セミリンガルの主人公、朝日田ありすが天才と呼ばれる同級生、犬星類と出会い自分の人生を少しずつ前に進めていく作品だ。
生きづらさを抱えた日々に差し込んだ一筋の光
美しい容姿を授かっていたありすは、周りから「かわいい」と言われることが多かった。しかし本人はそれを純粋な褒め言葉としてではなく、マスコットキャラクターや赤ん坊のような何も出来ない存在、愛玩動物のような意味合いで言われていると受け止めていた。
そしてありすが抱えるセミリンガルとは2つの言語を習得しようとした結果、どちらの言語も十分に話せない状態のことを指す。幼い頃から両親の方針で英語と日本語の両方を学びながら、大きな期待を持って育てられたありす。しかし突如両親が他界してしまい、どちらの言語も充分に話すことのできない状態で祖母に引き取られることに。
転校した小学校では、日本語のおぼつかないありすに対して周囲は好奇の目を向け、時に心ない言葉を投げかけられることも少なくなかった。自分が何者なのかも分からず、明日何をすれば良いかさえも見えない鬱蒼とした日々を過ごしていた。
そんな上手く言葉にできないモヤモヤを抱えていたありすの前に現れたのが怪物、神童といった異名を持つ天才、犬星類だった。
犬星は他のクラスメート達とは違い、ありすがセミリンガルであることに気付いた上で「俺が君を賢くする」とありすに伝える。
自分の価値を認識できなかったありすが、初めて明日に希望を持てた瞬間。犬星から最初に課された宿題は「明日何をすべきかを見つけること」。ありすの視界は大きく開け、宇宙飛行士という壮大な夢への道筋が輪郭を帯びてくるのだ。
未来はいつからでも変えられることを教えてくれる
前年の「マンガ大賞2024」で1位となった『君と宇宙を歩くために』(泥ノ田犬彦/講談社)も、生き辛さを抱えた主人公達を描いた作品だった。そして『ありす、宇宙までも』も近いテーマを取り扱っている印象だ。目の前が暗闇に染まってしまうような状態でも、それを理解し一緒に進んでくれる存在がいることが大きな救いになることを読者に教えてくれる。展開が進むにつれ、犬星という最高のバディを得たありすからは確かな内面の成長が感じられる。






















