学校の落ちこぼれ少女が宇宙飛行士に……藤本タツキが絶賛する『ありす、宇宙までも』のドラマチックな魅力

  学校の落ちこぼれだった1人の少女が、日本人女性として史上初となる宇宙飛行士の船長(コマンダー)に……。『ありす、宇宙までも』は、そんなドラマチックな物語を描いたマンガだ。

売野機子『ありす、宇宙までも』(1) (小学館)

  8月30日に発売された単行本第1巻は早くも漫画好きのあいだで大きな話題を呼んでおり、『チェンソーマン』で知られる藤本タツキも“ながやまこはる”名義のXにて絶賛の言葉を記していた。

  『ありす、宇宙までも』の作者は、『薔薇だって書けるよ』や『MAMA』などの作品を手掛けてきた漫画家・売野機子。6月3日に発売された『週刊スピリッツ』27号(小学館)から連載が行われている。

 主人公の朝日田ありすは、容姿端麗で運動神経もいい“非の打ちどころのない”小学6年生。しかし実は日本語が苦手で、周囲の言うことをよく理解できておらず、勉強にも付いていけていなかった。クラスメイトたちはそんな彼女を「天然」の美少女としてかわいがるのだが、本人はひそかにそのことで傷ついている。

 だがある日、「神童」と呼ばれる隣のクラスの男子・犬星類との出会いによって人生が一変。物知りな彼は、ありすが母語も第二言語も中途半端にしか習得できていない「セミリンガル」の状態ではないかと分析する。それを伝えられた彼女は、自分が“なんにでもなれる”存在であることに気づくのだった。

  そしてありすは中学校に進学した後、毎日放課後の1時間を使って犬星から“賢くなる”ための特訓を受けることになる。やがて宇宙飛行士船長になる彼女が、夢を叶えるために歩き出した瞬間だ。

 ハンデを背負った主人公が夢を叶えていくストーリーはある意味王道といえるが、同作の場合は本当の意味でゼロからのスタート。なにせ犬星は、学習の第一歩として小学1年生の「こくごドリル」をありすに解かせるのだ。日本語が不得手だったことから生じた学習の遅れを一気に取り戻した上で、一握りの人間しかなれない宇宙飛行士を目指す……。気が遠くなりそうなほど壮大な道のりではないだろうか。

 しかも知識を得ることによって勉強ができるようになるだけでなく、“世界の見え方”そのものが変わっていくところも描かれているのが、同作の大きな魅力だ。

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