『チ。』『べらぼう』『舟を編む』NHKドラマは“出版”がキーワード? 本を通じてメディアの真価を問う意味
テレビの作り手と重なる出版の現状

NHKで放送されているアニメ『チ。―地球の運動について―』にも、同じような動機を感じる。
魚豊の同名漫画(小学館)をアニメ化した本作は、中世ヨーロッパを舞台に、異端者の思想として危険視されていた地動説を知った人々が、異端審問官の弾圧を受けながらも、研究を続け、次の世代に成果を引き継いでいく姿を描いた物語だ。
劇中では、中世の価値観に反発しながらも何とか地動説を学ぼうとする人々が次々と登場するのだが、個人的に印象的だったのは、第2章に登場するオクジーがヨレンタという少女に「文字が読める」というのはどういう感じなのだ? と問いかける場面。ヨレンタは文字はまるで奇跡のようだと語り、文字が使えると「時間と場所を超越できる」と言う。それはつまり、200年前や100年前に書かれた研究や物語に触れることができるということなのだが、それこそがまさに紙の本が長い歴史をかけて存在し続けてきた、最大の理由ではないかと思う。
だが、かつて紙の本が担った言葉を伝える役割は、電子書籍やSNSが中心に変わった時に崩壊するのではないか?
これはテレビの作り手なら、YouTube等の万人が送り手になることが可能な投稿動画サービスや、Netflix等の定額配信サービスといった新興メディアが映像文化の主流になるとテレビは崩壊するのではないか? という不安に置き換えることが可能だろう。
個人的な意見を言うならば、紙の本やテレビといったメディアは伝達手段の一形態に過ぎないと思っている。だから、喪失感や危機意識を抱くことはあまりないのだが、オールドメディアの遺産を未来に引き継ぐ方法を考えるきっかけとして、創作や出版の起源を辿るドラマが作られる意味は、あるのではないかと思う。






















