OKAMOTO’Sオカモトショウ連載『月刊オカモトショウ』
オカモトショウ「マンガ大賞2025」ノミネート作品を語り尽くす! 『図書館の大魔術師』『ふつうの軽音部』……本命は?

共通しているのは、“自分の世界を持ってる人が強い”ということ
——『ふつうの軽音部』も注目の作品。andymori、銀杏BOYZ、ナンバーガールなどが好きな高校1年生・鳩野ちひろが、初心者ながらも憧れのギターを手に入れ、念願の軽音部に入部するという音楽マンガです。
主人公はもちろん、クラスメイトや軽音部の子たちのキャラクターが面白いんですよね。音楽マンガとしても、不自然なところが全然なくて。「ギターの初心者って、こういうところから始まるよね」という描き方もそうだし、すごくリアルだなと思います。ただ、個人的にはこのマンガに出てくる軽音部のノリがまったく分からないんですよ(笑)。自分が行ってた学校はかなり個性的だったし、軽音部はあったけど、完全に洋楽がメインだったんです。OKAMOTO'Sのメンバーもそうで、一通り洋楽を通った後、なぜか村八分(70年代前半、日本のロック黎明期に活動した伝説のバンド)のカバーで文化祭に出たり。エミネムが学校のなかで流行って、そこからKANDYTOWNが出てきたりしたんだけど、(『ふつうの軽音部』とは)送ってきた青春の質が違いすぎて、パラレルワールドを観ているような気持ちになります(笑)。すごく丁寧に描いているから、主人公の女の子の成長だったり、彼女の歌の力で何かがひっくり返るような展開を楽しみにしてます。
——『ありす、宇宙までも』はどうですか?
すごく面白いです。主人公(朝日田ありす)はセミリンガル(2つ以上の言語を習得しているが、いずれも十分に流暢に話せない状態)の女の子で、日本も英語も中途半端にしか覚えてなくて。見た目がかわいいから「ありすはそのままでいいよ」みたいに扱われるんだけど、めっちゃ頭が良くて、意地悪だと思われている男の子に出会い、“君、思っていることを口にできてないだけでしょ”って指摘されるんですよ。そこから勉強を教えてもらって、学べることのピュアな喜びを覚えて、宇宙飛行士を目指し始める。このマンガも新しい視点だし、今の時代に合ってるなと思います。SFということでは『COSMOS』もいいですね。
——『COSMOS』は宇宙人専門の保険調査員の活躍を描いたSFヒューマンドラマ。人の嘘が見抜ける高校生・水森楓、銀河金融保険公社「COSMOS(コスモス)」の調査員・穂村燐を中心に奇想天外なストーリーが繰り広げられます。
『べるぜバブ』の田村隆平さんの新作なんですが、本当にマンガが上手いなって思います。『SKET DANCE』の篠原健太さんもそうですけど、田村さんも「この人だったら、どんなテーマでも面白く描くんじゃない?」と思わせてくれるところがあって。今後もヒット作を出し続けるんじゃないかなと思ってます。
——なるほど。『路傍のフジイ』もそうですけど、全体を通し、主人公像が多様化している印象もあります。
共通しているのは、“自分の世界を持ってる人が強い”ということかもしれないですね。『この世は戦う価値がある』『どくだみの花咲くころ』の主人公もそうなんだけど、周りの評価とか常識みたいなものに関係なく、自分の世界をしっかり持っていて。そういう主人公が注目されることは、すごくいいことだなって思います。どんな時代、どんな状況であれ、人が決めた基準に沿うよりも、自分を持っている人が強いのは変わりない。そういう人をウザいと思わず、マンガとして魅力的に描いて、それを読みたいと思う人がたくさんいるのはいい流れじゃないでしょうか。
——確かに。
マンガ大賞全体のことでいうと、『カグラバチ』(外薗健)がノミネートされていないのは意外でしたね。次世代の「少年ジャンプ」を背負うマンガだと思ってるので、今後も注目していきたいなと。そのほかにも『るなしい』(意志強ナツ子)『みちかとまり』(田島列島)とか、めっちゃいいマンガもいろいろあって。引き続き、この連載でどんどん紹介したいと思ってます!

























