孤島に集まった五人の少女が疑心暗鬼に陥って……ノン・ストップの孤島ミステリー『そして少女は孤島に消える』

何らかの理由で孤島(無人島)に集まった、もしくは集められた人々の間で事件が起こる。このような孤島ミステリーが増加している。外部と断絶した限定的な孤島は、ミステリーの舞台としてとても魅力的だからだろうか。実際、孤島というだけでワクワクしてしまう。だから本書『そして少女は孤島に消える』(双葉社)も、大いに期待しながら手に取った。
十八歳の井上立夏には、幼い頃の忘れられない記憶があった。シングルマザーで、立夏をネグレクト気味に育てていた母親が、ある日、彼女を残して失踪。その後、死体で発見されたのだ。警察は自殺として処理したが、立夏は疑いを持っている。なぜなら母親が失踪する前、誰かを警戒しているような様子を見せていたからだ。
伯母夫婦に引き取られた立夏は、それまでのことがあり内向的な性格になった。しかし伯母の勧めにより十歳で児童劇団に入る。そしてオーデションに合格し、テレビのホームドラマ『クローバー』に出演。八年の長寿番組となり、一家の元気な末っ子「つばさ」を演じた立夏も人気者となる。しかし番組の終了により、彼女はつばさのイメージから脱却しなければならないと考えるようになった。
そんなとき、作品の評価は高いものの、数年間失踪状態にあり、不穏な噂のつきまとう映画監督・高遠凌が、新作の主演オーディションをするという話を聞く。オーディションに参加し、最終審査に残った立夏は、他の四人の少女(年齢的に少女とは呼べない人物もいる)と共に、ロケ地となる孤島に向かった。そこで三日をかけて台本に書かれた演技をして、主役を決めるというのだった。
立夏以外の四人のことを、簡単に記しておこう。桐島瞳は最年長の二十一歳で、劇団出身の演技派。桜井結奈は十八歳で、芸能界デビューしたばかり。斉藤えみりは十九歳の大学生で、熱狂的な高遠監督のファン。野々村恋は十七歳の高校生で、怪我により断念したテコンドーの代わりに熱中するものを求めている。少女たちの書き分けが巧みであり、それぞれの個性が際立っている。
さて、物語はここからが本番。到着早々、「島に残るのは、君たち五人だけだ」といわれ、スタッフは姿を消す。実際には残っているらしいが、姿は見せない。呪われた島に来た五人の少女が、斧を持った仮面の男に襲われ一人ずつ殺されていくというホラー映画『モンスター』の台本(一日ごとに必要な部分が届けられる)に沿って、オーディションの演技をする立夏たちだが、不可解なことが続くうちに、現実と映画の境目があやふやになり、立夏たちの恐怖は募っていくのだった。
孤島に舞台が移ってからの展開は、ノン・ストップといっていい。とにかく次から次へと、立夏の不安を掻き立てる出来事が起こるのだ。それにより作中で立夏が、「私たちは互いに疑心暗鬼に陥った」というように、五人の間で不審と不安が渦巻くようになる。もちろん読者も立夏と一緒に、疑心暗鬼に陥る。単なる映画の小道具は、本当にそれだけの意味しか持っていないのか。五人の中の誰かが、悪意を抱いているのではないか。このようなオーディションをする、高遠監督の意図はどこにあるのか。現実と映画の内容のシンクロは偶然なのか。矢継ぎ早なエピソードに翻弄される。だけど、それが面白くってたまらない。先が知りたくて、ページを繰る手が止まらないのだ。