『キングダム』国を賭けた戦いの中で愛に生きた将軍・倉央の魅力 SNS「惚れました」「漢すぎるだろ」の声
※本稿は漫画『キングダム』のネタバレを含みます。未読の方はご注意ください。
累計発行部数が1億部を超え、実写映画版も絶好調の漫画『キングダム』(原泰久)。 武力により中華を統一し、戦のない世の中を作るという夢を掲げている秦王・嬴政(えいせい)と、天下の大将軍を目指す李信の活躍を描く本作は、その信念や個性が深く掘り下げられたキャラクターたちが魅力的だ。
最新刊73巻では、趙の滅亡に王手をかける戦いであった「番吾の戦い」がメインに描かれている。趙の軍総司令の李牧の策によって開戦後僅か1日と経たず敗れてしまった秦は、宜安城(ぎあんじょう)攻略の大敗を覆せず、中華統一が事実上不可能に近いところまできてしまう瀬戸際となってしまう。
ストーリーの根本を揺るがす事態にまで発展した事案だったが、それ以上にこれぞ”漢”という行動を起こした人物がいる。798話にて、敵である趙将カン・ソロの元に丸腰でやってきた秦軍第一将・王翦の軍に属する将軍・倉央だ。敗戦国かつ、此度の総大将王翦の側近である彼が投降したのは、部下であり自らの女とうたう糸凌(しりょう)を、命と引き換えに抱きしめさせてほしいという願いからだった。全てを投げ打ってまで糸凌を求めた倉央というキャラクターはどんな人物なのか、原作から紹介したい。
倉央が作中に登場したのは、珠海平原の戦い真っ只中である54巻。初登場から王翦に対し核心に迫る質問を繰り返す姿や、「探り」として矛を振るった時の武勇など、読み手には登場から強く印象に残るキャラクターだったことだろう。
さらに、糸凌の存在も大きい。2人は突撃前に「勝って朝までお前を抱きまくる 夜の体力を残しておけよ」や「今宵はこの城で一番眺めのいい部屋でお前を抱くぞ」など、これまでにない大人な愛が描かれた瞬間であり、これまで登場したキャラクターの中で明らかに異質な空気を持っているのは間違いない。
一見ネタキャラかのように思えたかもしれないが、どのキャラクターよりも仲間思いな一面が、李牧対桓騎の構図となった宜安の戦いでみられる。李牧の策により孤立させられた桓騎軍の窮地を救おうと、倉央は何度も王翦に対し直訴していた。一時は強引にも兵を連れていこうとしており、自らの危険を顧みずとも仲間を助けに向かう姿勢と、実行できずやるせない表情が描かれている。
命からがら脱出を果たした信からも、「なぜ助けてくれなかった」と問われる場面もあったが、倉央は言い訳することなく、八つ当たりに近い信の怒りを受け止めた。たったワンシーンではあるものの、倉央の懐の深さを感じられる一幕といえるだろう。