斜線堂有紀はとんでもない作家であるーー『ミステリ・トランスミッター』で示した圧巻の独創性

斜線堂有紀『ミステリ・トランスミッター』

 無人の宇宙探査機による、スマートな地球外知的生命体とのコンタクト方法。そのために考えられたのが、金でメッキをされた銅製の円盤状記録媒体――ゴールデンレコードに地球の何たるかや、人類の文化を記録し、宇宙に飛ばすことであった。今日は、そのゴールデンレコードに乗せる写真を決める、第一回の会議である。ところが予選委員会メンバーに、なぜか漫画関係の仕事をしている日本人の御竈門玖水という男が紛れ込んでいた。手塚治虫の『リボンの騎士』をゴールデンレコードに入れようとして、委員長のカール・セーガンに呆れられる玖水。だが彼は、他の予選委員が提出した写真の不備を、次々と指摘していくのだった。

 まるで名探偵のような玖水の指摘が、やがて予想外の事態に到達する展開に唖然茫然。どこをどうすれば、こんな発想が出てくるのだ。それを小説という形にできるのだ。作者の脳の機能が、私たちとは二ランクくらい違うとしか思えない。小説に驚きを求める人は必読だ。

 ああ、ちょっと興奮してしまった。とにかく本書は、「妹の夫」と「ゴールデンレコード収録物選定会議予選委員会」を読むためだけに購入する価値があるのだ。あらためて思ったが、斜線堂有紀、とんでもない作家である。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「書評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる