なぜ? 女児向け本、社会人から大反響で10万部突破 編集者が明かす、意外なヒットの理由
■ 異例の10万部を突破へ
2019年に発売された女児向け書籍『自分をもっと好きになる 【ハピかわ】かわいいのルール』(池田書店)が、「大人のコミュニケーション指南本」として今SNSで幅広い年代から注目を集め、同分野では異例の10万部を突破。ネット書店でも品薄状態となっている。
大人が共感と反響続々!大ヒット女児向け本『かわいいのルール』の紙面
同書は、「すてき女子の新常識」をキャッチコピーに、マナーや言葉遣い、身だしなみやファッション、人間関係をスムーズに築く方法に至るまでを、かわいらしいマンガ&イラストで紹介している女子小学生向けの実用書だ。それが今、20代から40代の単身世帯での購入も増えているという。
実は2021年にもSNSがきっかけで話題を集めた同書。他社からも同ジャンルの書籍は多く発売されている中、なぜ同書がこれほどの人気を誇るのか、その企画意図や話題となった理由や背景などについて、池田書店の担当編集・老沼友美氏に話を聞いた。
大人が「子供の頃に欲しかった」と思える本をテーマに
――女子小学生が読者層である『自分をもっと好きになる【ハピかわ】かわいいのルール』(以下、『かわいいのルール』)ですが、社会人からの反響がすごいですね。
老沼友美氏(以下、老沼):発売から5年が経っているにも関わらず、話題にしていただき本当にありがたく思っています。実は「かわいいのルール」は、2021年にも当時のTwitter(現:X)で話題になり、品薄状態になったことがありました。
そのときは本書を読んだことで、お子さんから気遣いを感じるようになったという成長を綴ったものでした。投稿内で「この本の影響かも」と紹介してくださり、情報番組などでも取り上げられ大変多くの反響をいただきました。
――SNSでは「人間付き合いの基礎が書かれている」と、大人のコミュニケーション指南書としてもおすすめされているようです。
老沼:子供の頃からの悩みをずっと持ち続ける人が多いのか、と感じます。制作前のリサーチでも、傷ついた経験やモヤッとした気持ちを何年経っても抱えているという声を多く聞きました。子供の頃って、よく理解しないまま残酷なことをしてしまいがちです。そんな子供時代を経た親が「当時、これを誰かに教えてほしかった」と思えるようなものを作りたい、というのが当初の目標のひとつです。
主体的に考え、心を育てる手助けを
――当初、女子小学生向けとして企画した際の意図を詳しくお聞かせください。
老沼:小学校4~6年生の女子を想定読者に、今の時代、彼女たちに“本当に必要な情報は何だろう”というところから考えました。ほかの出版社からも類書がたくさん出ていて、どう差別化しようかと悩みました。
企画立案当時は「外見をかわいくして、みんなと差をつけよう」という趣旨の書籍が多かったので、弊社では「中身を大切にする」ということをテーマに作ろうという方針になりました。そこには、今の時代に合わせたいという思いも強くあります。
外見も大切ですが「人から愛されるために〇〇しよう」という考え方にはしたくなかったんです。それよりも内面を知って自己肯定感を高めたり、他者に興味を持てるようになってほしくて。それが「かわいい」に繋がっていくのではないかと思っています。
――自己肯定感は近年、頻出するテーマでもありますが「他者に興味を持つ」は珍しいかもしれません。
老沼:自分と向き合うと何をしたいのか、どういう人間になりたいのかという目標を立てやすくなります。小学生ってコミュニティも狭いですし、学校がすべてと考えてしまうのですが、そうじゃないよと。他者の軸に乗るのではなく、自分を通して他者に興味を持つことにより、いろんな扉があることを示唆したいという想いもありました。
そういった“自分づくり”の手助けができればと企画しており、その願いは後に続く「ハピかわ」シリーズでも一貫しています。