【ライトノベル最新動向】Kis-My-Ft2 宮田俊哉が紡ぐ青春ストーリーも 話題作が並ぶ2024年5月の新刊ラノベ
5月のライトノベルは、面白そうな設定の作品や新シリーズが登場して、これからのラノベ市場を賑わせていってくれそう。筆頭にあがりそうなのが、5月10日発売の不破有紀『はじめてのゾンビ生活』(電撃文庫)。人をゾンビにする病気が流行して地球上にどんどんとゾンビが増えていってから、酸素も新鮮な食料も必要としないゾンビが宇宙へと進出していって活躍し、逆に普通の人間はどんどんと少数派になっていく歴史の流れを、何百年というスパンで綴ったSFだ。
ゾンビになった彼氏はもうチョコレートは食べないから、代わりに最高級のゴルゴンゾーラチーズを贈りたいけれど、高くて買えなくて思い悩む女子高生のエピソードだったり、目玉を取り出せるゾンビの特徴を活かして、舞台の上で目玉を落として笑いを取るゾンビの漫才師のエピソードだったりと、楽しげなゾンビ生活の描写が続く。もっとも、初期にはゾンビは迫害されていて、ブロードウェイを追われて月に行ってそこで人気歌手になった女性もいた。
なによりゾンビは子孫を残せないため、病気にかからず長生きできてもいずれは絶滅してしまう。そんなダークな未来が見えたゾンビが、次の世界の担い手をロボットに求める動きは、人間の知性を超える人工知性が生まれる可能性も視野にいれたポストヒューマンSFと言えそうだ。様々な時代のゾンビや人間の様子を切り取った短いエピソードを読みながら、来るべき未来のビジョンを想像して楽しもう。
5月24日発売の達間涼『電脳バニーとゲームモノ。』(MF文庫J)は、人類が仮想空間へと移住してから20年が経った世界が舞台のストーリー。どのような望みもかなうという街・パンドラに暮らす記憶を失った少年・波止場が、バニーガール姿のコンシェルジュアプリと共にある騒動に巻き込まれていくストーリーから、楽しげに見える仮想世界の誰にも知られていない秘密が浮かぶ。もしかして終わってしまうのか。人類はどこに向かうことになるのか。『はじめてのゾンビ生活』とは違った未来のビジョンを見せてくれそうだ。
作者が宮田俊哉(Kis-My-Ft2)ということで盛り上がっている『境界のメロディ』(メディアワークス文庫)も5月24日に発売。メジャーデビューを目前にしながら相方のカイを交通事故で亡くしたキョウスケは、音楽から離れて無気力な日々を送っていた。ところが3年が経って突然、死んだはずのカイが前に現れ沈んでいたキョウスケを叱咤する。本当にカイなのか。いったいどういうことなのか。そんな疑問も抱きつつ進んでいくストーリーの先に、どのような展開が待っているかが気になって仕方が無い。ドラマCDが同梱の『【ドラマCD付き特装版】境界のメロディ』も同時発売。
「威風堂々惡女」のシリーズを完結させた白須梓が、5月20日に上下巻で出す『魔法使いのお留守番』(集英社オレンジ文庫)も異世界を舞台にした重厚なファンタジーの物語を楽しめそう。物語の舞台は世界の果てにあるという"終島"。そこには不老不死を手に入れた大魔法使いシロガネが暮らしていると言われていて、世界中から永遠の命を求める人々が“終島”へと向かったが、誰ひとりとして願いを叶えたものはいなかった。
シロガネはどうやら不在らしく、“終島”では留守を預かる竜のクロと青銅人形のアオが、次から次へとやってくる訪問者を追い払いつつ穏やかな日々を過ごしていた。そんなある日、クロとアオは浜辺に漂着した小舟を見つけて、衰弱していた少年を救う。そして始まる新しい暮らしや、シロガネという魔法使いの過去などを描くストーリーの中で、どのような秘密が解き明かされるかに興味を誘われる。kokunoが描く美麗な表紙絵も含めてじっくりと味わいたくなる物語になっていそうだ。