夢枕獏『陰陽師』シリーズは伝奇小説であり探偵小説だ 映画でも注目したい安倍晴明&源博雅の“対の関係”
源博雅が「人間・安倍晴明」の“心”を担う
ちなみに、昨年刊行された『陰陽師 烏天狗ノ巻』所収の「梅道人」では、こうした主役ふたりの関係に大きな変化が起き、SNSなどで一部のファンを動揺させた。
ただ、それでも、「博雅という呪がなければ晴明という呪は存在しない」、あるいは、「晴明という呪がなければ博雅という呪は存在しない」という「対」の関係は、この先もずっと変わることはないだろう。
そう、安倍晴明という陰陽師を、どこか冷徹な怪物めいた人物だと思っている向きもおられるかもしれないが、彼の温かい「人間」の心の部分は、常に源博雅という「呪」が担ってくれているのである。だから晴明がいくら巨大な“闇の力”を持っていようとも、悪の道に堕ちることはないのだ。