世界中で盛り上がる「縦型ショートドラマ」日本でもブームとなるか? ドラマ評論家がその可能性を考察

縦型ショートドラマの可能性
成馬零一『テレビドラマクロニクル 1990→2020』(PLANETS / 第二次惑星開発委員会)

 TikTokを中心とした縦型の動画プラットフォームにおいて、「ショートドラマ」と呼ばれるコンテンツが注目を集めている。従来のテレビドラマや映画とは異なるこのコンテンツには、どのような可能性を秘めているのか。『テレビドラマクロニクル 1990→2020』(PLANETS / 第二次惑星開発委員会)などの著作を持つ、ドラマ評論家の成馬零一が考察する。

独自の映像表現の可能性が開かれている

 Tik Tok等のスマホアプリで観ることに特化した縦型ショートドラマが世界中で盛り上がり始めている。中国では1話あたり1分弱のドラマを連続して配信するショートドラマがブームとなり巨大市場を獲得しており、アメリカでも中国の上場企業・中文在線が展開するショートドラマアプリReel Shortが急成長している。

 対して日本では、2023年3月に日本テレビがTik Tok上にショートドラマ専用アカウントを開設しショートドラマ『毎日はにかむ僕たちは。』(メイン画像)を配信。同年7月にTik Tokアカウント「ショードラ」が開設。山戸結希が監督したTic Tok連続ドラマ『みつめてそらして』(全8話)等のショートドラマが続々と配信されており、13歳以上なら誰でも参加できる「ショードラアワード」という新人賞もTik Tok内で開催されている。また、今年の夏には縦型ショートドラマに特化したアプリ「SWIPEDRAMA」がリリースされる。

 縦型ショートドラマは、スマホ一台あれば撮ることができるため、ドラマや映画と違い、参入障壁がとても低い。そのため、新人映像作家の登竜門となり、ここから新たな才能が続々と現れるのではないか? という期待が渦巻いている。何より新しいのスマートフォンの縦型モニターで、そこにはテレビや映画とは似ているようで全く違う独自の映像表現の可能性が開かれている。

 残念ながら、縦長ショートドラマの多くは既存の映画やドラマの映像を縦長の画面に置き換えただけのものがほとんどだ。しかし、まれに縦長のモニターだからこそ映える構図を意識した作品が存在する。山戸結希が監督した『みつめてそらして』はその筆頭だろう。本作はスマホのモニターに向けて、女の子が語りかける姿を一発撮りで撮影したショートドラマシリーズで、主演女優が視聴者に向けて、直接話しかけているかのように錯覚してしまう面白さがある。いわゆるPOVホラー映画などで多用される一人称視点だが、スマホという生活に密着した機器を通して観るため、より身近なものに感じる。

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