世界中で盛り上がる「縦型ショートドラマ」日本でもブームとなるか? ドラマ評論家がその可能性を考察
また、人間の全身を収めた映像も、縦長の画面と相性がいい。横長のモニターが背景や他の人物を収めた空間の広がりが感じられる映像を得意とするのに対し、縦長のモニターは一人の人間にフォーカスしていく映像と、とても相性が良い。そのため、アイドルやモデルの全身を収めた動くグラビア写真集とでもいうようなPV(プロモーション・ビデオ)に、恋人や友人との「あるあるネタ」を扱った小さな物語が付加されたものが、一番相性が良いように思う。
逆に複雑な世界観や人間関係を描くこととは相性が悪い。描けるのは1シチュエーションが限界で、それ以上の情報量となると、スマホの小さなモニターだと集中力が続くなくなって、退屈してしまう。このあたりは大きなモニターで観る映画やドラマの方が圧倒的に向いており、大きな物語は巨大なスクリーンで観たいと思ってしまう。
ただ、日本には1話15分の短いドラマを半年かけて120話以上放送している朝ドラ(NHK 連続テレビ小説)が存在する。中国で盛り上がっている話数の多いショートドラマの話を聞いた時、真っ先に連想したのが朝ドラだった。最新作の『虎に翼』を観てもわかるとおり、朝ドラが短い話数の連なりによって、登場人物が多く、複雑な世界観を描くことに成功している。15分でもショートドラマとしては長い尺だが、これを更に細かく分割してスマホの縦長画面に特化させた、朝ドラのようなショートドラマが生まれる日も近いのかもしれない。