【ライトノベル最新動向】『薬屋のひとりごと』や『狼と香辛料』などアニメ化作品がランクイン
アニメの新番組が次々とスタートする月は、原作となっている小説や漫画の人気が急上昇することがよく起こる。Rakutenブックスの週間ライトノベルランキング(4月8日~14日)でも、8位に支倉凍砂『新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙X』(電撃文庫)が入って、原作を改めて最初からアニメにした『狼と香辛料 MERCHANT MEETS THE WISE WOLF』への関心をうかがわせた。
2006年に刊行された『狼と香辛料』(電撃文庫)の1巻がランキングに入ってくれば、再アニメ化による原作シリーズの活性化が本格的に始まったと言えるが、今の時点では100位まで見てもシリーズの他の巻は入っていない。現時点ではまだ、商人のクラフト・ロレンスと美少女の姿をした賢狼ホロの間に生まれた娘のミューリと、コルという青年を中心に描いた『狼と羊皮紙』シリーズの最新刊としてランクインした段階と言えそう。ただ、アニメの評判も相当に高いことから、日向夏の『薬屋のひとりごと』シリーズのように既刊がずらりと並ぶ可能性もありそうだ。
その『薬屋のひとりごと』シリーズは、最新刊の『薬屋のひとりごと15』(ヒーロー文庫)が1位をキープ。TVアニメでは、後宮で起こる事件をいろいろと解決していた猫猫だったが、この巻では医官付きの官女となって働いていて、宮中で行われるある重大な医療行為のためにかり出されることになる。最初は薬の調合を行っていたが、程なくして重大な役割を与えられることになって、いつも強気の猫猫も大いに戸惑う。
なかなかに緊張感のある展開を経て、もうひとりの主役ともいえる壬氏に関連したある情報が取り沙汰され、これからの展開で何か起こるかもと想像させる。猫猫の将来ともかかわってきそうな情報だが、それが実を結ぶのは次の巻か、ずっと先の巻か。気になるところだ。既刊の方も相変わらずの人気で、10位までに最新刊を含めて6冊、24位までにすべての既刊が入って絶好調ぶりを示している。ライトノベルの読者を超えたところで読まれるシリーズになったようだ。
ランキングの2位は、鎌池和馬による『とある魔術の禁書目録』から始まるシリーズの最新刊『創約 とある魔術の禁書目録10』(電撃文庫)。無印のシリーズがあり『新約 とある魔術の禁書目録』シリーズがあって、それに続くのが『創約』シリーズ。その右手にあらゆる超常現象を無効にする力を持った上条当麻と、10万3000冊もの魔導書を記憶して「禁書目録(インデックス)」と呼ばれる少女を中心に、さまざまな勢力が入り乱れては相争うストーリーが今も続く。死んだはずのアリス=アナザーバイブルが復活して起こる騒動を楽しもう。
3位の『薬屋のひとりごと14』に続く4位は顎木あくみ『わたしの幸せな結婚八』(富士見L文庫)。こちらもTVアニメ化や実写映画化を経て大いに認知度を高めたシリーズの最新刊で、対異特務小隊隊長として異形を相手に戦い続けている久堂清霞が、まだ学生だった時に経験した過酷な戦いを描いた中編や、清霞とようやく結婚を果たした美世の日常などを描いた掌編を収録。ちょっとした幕間的なストーリーを楽しめる。
5位は三上延『ビブリア古書堂の事件手帖Ⅳ~扉子たちと継がれる道~』(メディアワークス文庫)。北鎌倉にある古書店のビブリア古書堂を舞台に、篠川栞子という女性が本の知識を活かした謎解きを披露するシリーズとして始まり、今は栞子と元はアルバイト店員だった夫の大輔との間に生まれた扉子が、はやり本が関連する事件に挑むシリーズとなっている。最新刊では、鎌倉にあった文士たちが本を持ち寄り人に貸していた「鎌倉文庫」の所蔵本が行方不明になっている状況を元に、どこにあるのかを想像して物語として描く。史実かもと思えてくるほどのリアリティが感じられるエピソードだ。