衝動のまま生きるために必要なこととは?『人生のレールを外れる衝動のみつけかた』を読む

「衝動のままに生きる」のススメ

 一読してなるほどなあ、と思ったのは、個人的で強い衝動を発見したとしても、それだけでは不充分だという点だ。衝動のまま突き動かされて暴走したら、生活が破綻してしまう。衝動はどの方向に向かったらいいかを示すコンパスのようなものであり、実際に衝動に従って動くためには方角を付き合わせて歩くための地図や頑丈なブーツにあたる諸々が必要なのである。ではそれがなんなのかは、本書を読んで確かめてみてほしい。

 もうひとつの本書の特徴が、難解で抽象的な概念をできるだけ幅広い読者に理解してもらうべく、さまざまな比喩やマンガからの引用が散りばめられている点だ。そもそも本書における衝動とはどういうものかを説明するために、冒頭から地動説を扱ったマンガ『チ。地球の運動について』が引用され、それ以外にもさまざまなマンガの登場人物の行動や心情がタイミングよく例え話として挿入される。そもそも「衝動とは幽霊みたいなものである」という本書の屋台骨自体が比喩であり、的確な例え話でなんとかめんどくさい話を理解してもらおう……というサービス精神が感じられる。

 というわけで、心理学や哲学に関する専門知識がなくても、字を読む根気さえあれば衝動とは何かがなんとなく理解でき、そして自分の中に潜む衝動を発見するためのノウハウがわかる新書である。一読したならば、あとは自分の実践次第。これまでと同じ生活を送るか、それとも自らの衝動に向き合って大なり小なり人生のレールを外れ、冒険に満ちた生活に打って出るか。読後の選択こそが悩ましい、いい意味で危険な一冊だ。

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