新たなヴァンパイア漫画の金字塔? 古典をベースにした現代劇『#DRCL midnight children』に注目
古くは手塚治虫の『ドン・ドラキュラ』や萩尾望都の『ポーの一族』、そしてテレビアニメで人気を博した吸血鬼の父と狼女の母を持つ主人公が活躍する『ときめきトゥナイト』や『ヴァンパイア騎士(ナイト)』など、「吸血鬼/ドラキュラ」はこれまで数々の名作漫画の題材として扱われてきた。本稿では、ドラキュラを単なる血を吸う怪物ではなく、異邦人として描いた坂本眞一の新作漫画『#DRCL midnight children』について紹介したい。
時には男性、時には狼や謎の植物にも。変幻自在のドラキュラ像
『#DRCL midnight children』の舞台は、19世紀末に発表された小説『ドラキュラ』発祥の街・イギリス北部の港町ウィットビー。19世紀の『ドラキュラ』と同様、『#DRCL midnight children』でもドラキュラ伯爵は船でウィットビーに漂流する設定となっているのだが、注目なのは時には人影や背の高い紳士、時には狼、吸血樹など、ストーリーに合わせて変幻自在にその姿形が変わる点だ。
『#DRCL midnight children』の物語は日記形式で進行し、ある航海船がウィットビー湾岸で難破したところからストーリーが始まる。コミックの1話では、船長の航海日誌に沿って、乗組員が失踪したり背中にコケが生えて絶命したりと、次からつぎへと船員が謎の死を遂げる様子が描かれる。
やがて、船は無人となって座礁し、ウィットビー湾岸警備隊に捜索されることになるのだが、冒頭の数話だけでも、ドラキュラ伯爵の姿形、登場方法はさまざまだ。例えば、船員が夜に甲板で見かけた背の高い謎の人影、船の中に積み込まれた泥の木箱内にできた巨大な人型、そして髪の毛が生えた目玉のよう球体の植物、警備隊員たちの前に現れた赤い目の犬。
19世紀の『ドラキュラ』での伯爵は、文字通りの吸血鬼。人間の血を吸う「人型での怪物」として描かれていた。それに対して、『#DRCL midnight children』 のドラキュラ伯爵は、作中では「不死の王」と表現され、時には人間や人影、時には動物や植物にもなれて、さらにヒロイン・ミナが通うウィットビースクールの生徒たちに憑くこともできる、謎の「異邦人」として描かれている。