新たなヴァンパイア漫画の金字塔? 古典をベースにした現代劇『#DRCL midnight children』に注目

古典をベースにしつつ、人間の心理描写やジェンダーに焦点を当てた現代劇

 本作は、ホラー作品の古典「ドラキュラ」をテーマにしているが、その伯爵像は怪物でも悪魔でもなく、あくまでも得体の知れない謎の存在だ。そして、彼の姿は、目にした人間たちの証言や恐怖心、記憶の中で、姿形が自在に変化していく。こうした人間の主観や恐怖心によって、思い思いの「悪者」像が生み出されていく事象は、中世ヨーロッパで行われていた「魔女狩り」と似た構造とも言える。「魔女狩り」では、真実に関わらず、市民の密告や苦情によって一般市民(大半は女性だった)が「魔女」とされて裁判にかけられ、拷問や処刑をされていた。人間の気持ち次第で、自在に「悪魔」や「怪物」は生み出せてしまうのだ。

 また、本作は、大英帝国時代のイギリスが舞台にも関わらず、ウィットビーの名門校に女性で唯一入学を許された女生徒ミナが主人公役となっている。男尊女卑、階級社会など閉鎖的な時代の中で、勝ち気な性格で既成概念を破り己の自由を勝ち取ろうとするヒロイン像は、坂本眞一の前作「イノサンRouge」のマリーにも通じるところがある。ドラキュラ伯爵とミナたち生徒との抗争の行方、そして、坂本眞一が描く強いヒロイン像の今後にも要注目だ。

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