生成AI問題への言及が反響、人気イラストレーター・Ixyに聞く真意「今後への進化に懸念を抱いている」

人気イラストレーター・Ixyが語る生成AI

クリエイターの“なりすまし”が出現する可能性も

――今のまま放置しておくと、深刻な著作権侵害が起こりそうです。といいますか、現に起こっているようですが、対策は後手に回っている印象を受けます。

Ixy:繰り返すようですが、生成AIの技術が凄いことは、嫌でも認めないといけないんですよ。言葉を入力したら、それなりのものが出てくる技術は純粋に凄いですから。ただ、繰り返すようですが、生成AIが出力したイラストに著作権を与えるとなれば、話が変わってきます。絵柄のアイデンティティーは、クリエイターにとってもっとも重要なものでしょう。それをコピーしたものが瞬時に作成できるなら、例えばIxy風のAIイラストを使って「これはIxyが描いた作品ですよ」と偽り、悪用される可能性もあります。ネット上だと、作家のなりすましなども出現しそうで、心配です。

――イラストレーターや漫画家のなりすましは、Xでも以前から問題になっていますね。ただ、これまでのなりすましは既存のイラストを使ってそれっぽく振る舞うパターンが多かったのですが、AIを使えばまったく新しいイラストを使って偽装できる。これは社会問題になりそうです。

Ixy:僕は、このまま生成AIのユーザーが、法で規制されていないからといってめちゃくちゃなことをしていくと、ゆくゆくは使用禁止になるかもしれないと思っています。ハリウッドで議論になったディープフェイクの技術や、岸田総理に似せたAI動画は世間を騒がせていますよね。AIイラストも誰かが大問題を起こしそうで、不安なのです。

――もちろん全員ではありませんが、AIイラストを出力している人のXを見ると、クリエイターを煽るポストをしている人も目立ちます。

Ixy:こういったマナーが悪い人のせいで、既に、SkebではAIイラストの投稿は禁止されています。それなのに、そのSkebでのAI検閲を突破できるという記事も某所で出ていて、いたちごっこのような状態が続いています。また、DLsiteでは、AIイラストを使ったCG集などは出せなくなっているんですよ。

マナーが悪いユーザーのせいで規制される可能性も

――企業側がAIイラストについて、自主規制を行うようになったわけですね。

Ixy:さすがに、これは規制されても仕方ない行動だし、現にそうしたトラブルが起こっているわけです。このままだと、生成AIの使用そのものが禁止される可能性もあるので、ユーザーのマナーの是正は必要だと思います。「法的に問題ないのだから何が悪いんだ」と頭ごなしに怒るのではなく、現行のクリエイターの活動を阻害せず、住み分けができる使い方の話に注力したほうがいいのではないのかと。とにかく、対立を煽るコメントをするのは双方にとって良くないと思います。

――問題が山積みですね。Ixy先生は、今後、AIイラストをどう扱っていくべきだと考えますか。

Ixy:生成AIで大量生成したものには、著作権はつけない。または、一時的に認めるけれども、人が描いたものならば、後から似たものが発表されても著作権を認める。自分が思いつくのは、このくらいでしょうか。とにかく、生成AIのスピードで大量にイラストが出力され、それぞれに著作権があるとなってしまうと、クリエイターの創作への影響が深刻になってしまいます。

――おっしゃる通りだと思いますし、Ixy先生がイラストレーターの業界全体の行く末を、不安視されていることがわかります。

Ixy:一部の過激な生成AIユーザーのせいで、生成AIを創作の一部に使いたいという人にも、迷惑が掛かっているのではないのでしょうか。一方で、生成AI反対派にも極論過ぎる人もいますし、今のXって、極論が横行して暴力的な人ばかりになっている気がします。僕のもとにも様々な意見が寄せられますが、こういうポストに反論したり、引用リポストをすると火の粉が降り注ぐので、沈黙が最適解なのかもしれません。ただ、現状のマナーの悪さを見ていると、言わずにはいられませんでした。

――Ixy先生が今回のポストに込めた思いが伝わってきます。

Ixy:黙っていると、なし崩し的に便利なツールが使えなくなったり、著作権侵害が起こって規制が入ったりしそうですから。ただ、僕は今後、こういう声明を出すことはないと思います。ですが、生成AIとAIイラストの動向は注視していくつもりです。

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