OKAMOTO’Sオカモトショウ、「ジャンプ」期待の新作『カグラバチ』を語る 「ちゃんと応援しないといけない」

オカモトショウが語る『カグラバチ』への期待

 ロックバンドOKAMOTO’Sのボーカル、そして、ソロアーティストとしても活躍するオカモトショウが、名作マンガや注目作品をご紹介する「月刊オカモトショウ」。今回は、週刊少年ジャンプ(集英社)で9月18日から連載がはじまった新作『カグラバチ』(外薗健)をピックアップ。「今後のジャンプを背負って立つ可能性を感じる」(ショウ)という『カグラバチ』の魅力について語ってもらった。

「これは期待できる」

——今回ピックアックしていただいたのは、少年ジャンプで連載がスタートしたばかりの『カグラバチ』。3号連続で新連載が開始される「JUMP NEXTWAVE新連載3連弾」の2作目ですが、ネットミームの拡散によって海外でも注目を集めています。

 ずっと「ジャンプ」を読んできましたが、3号連続の新連載ーー『魔々勇々』(林快彦)、『カグラバチ』、『ツーオンアイス』(逸茂エルク)はどれもいい感じです。なかでも『カグラバチ』は、確かに海外のネットミームとしてネタ的に扱われている感もありますが、実際のところ、すごく有望だと思ってます。

 ジャンプの系譜のことから話すと、『チェンソーマン』(藤本タツキ)、『呪術廻戦』(芥見下々)は新たな流れを作ったと思うんです。どちらも、これまでの王道のジャンプヒーローではなく、ダークヒーロー的な主人公なんですけど、それが世の中的にもきちんとヒットして。『鬼滅の刃』(吾峠呼世晴)は伝統的なジャンプ作品のあり方がベースになっていたと思いますが、『チェンソーマン』『呪術廻戦』はまた別の形で、新たな扉を開いた感じがあった。長年のジャンプ読者としては、「この後に続くのはどんな作品だろう」と気になっていたんですけど、『カグラバチ』がはじまって「これは期待できるな」と。

——そこまでのポテンシャルを感じていると。

 もちろん、その他にもいい作品はあるんですよ。女性落語家を主人公にした『あかね噺』(原作:末永裕樹/作画:馬上鷹将)も新しいなと思ったし、去年の終わりくらいにはじまった『一ノ瀬家の大罪』(タイザン5)、「暗号学園のいろは」(原作:西尾維新/作画:岩崎優次)もおもしろい。今年でいうと『アイスヘッドギル』(蜂矢育生)もいいですよね。ただ、最近の新連載はどちらかというと、『ドラゴンボール』や『ONE PIECE』など、王道ジャンプのいいところを汲み取った作品が多い印象があって。わりと明るめというのかな。

——王道路線への回帰、という方向性もあった。

 はい。けれど『カグラバチ』はそうではなくて、ダークヒーロー系なんですよ。“刀”がポイントになっていて、妖術的な技を使うという意味では、『BLEACH』に近いとはいえるかもしれませんが。

 簡単に内容を説明すると、舞台になっているのは現代の日本。今も“刀”が使われているというSF的な設定になっています。主人公の六平チヒロは刀鍛冶の父(六平国重)の手伝いをしながら刀鍛冶を目指している。ところがある日、刀を奪いにきた集団によって父が殺されてしまうんです。18歳になったチヒロは、父が遺した渾身の一振りを持ち、父の古い友人である柴という男と復讐の旅に出るーーというストーリーですね。

——第1話からダイナミックに物語が展開して、一気に引き込まれるというか。

 コマ割りはわりと大きめで、細かい説明がなくてもしっかりストーリーが動いていくんですよね。セリフが少ないのに情報量が多いというのは、すごく上手いなと思います。読者のリテラシーを信頼しているというか、「わかるでしょ?」という感じがあるのも新いなと。絵も上手いし、デフォルメ的な表現も達者なんですよ。全体的な世界観としては、やっぱり“刀”が中心になっていて。妖術を使うのもそうだけど、日本古来のファンタジーの要素がちゃんと盛り込まれているなと思いますね。

 第2話で東京に行くんですけど、都会の描き方もいいんですよ。高層ビルやタワーが立ち並んでいるんだけど、テッペンがお城の形みたいになってるデザインで。窓越しの風景から都市の全景に移る映像的な描き方もおしゃれだし、その上に書かれた“東京”のフォントも大正ロマン的ですよね。

 また、見逃せないのは日常の描写とバトルのバランスがとてもいいんですよ。

——日常のホッコリしたシーンと、バトルの場面の対比ということですか?

 そうですね。父ちゃんとのやり取りだったり、主人公と柴の会話もそうなんですけど、クスッと笑えるような場面を取り入れるのが上手い。その直後に激しいバトルシーンがあったりするので、かなりギャップがあって。そうして緩急をつけながら、違和感なくストーリーが進んでいくのも『カグラバチ』の良さだと思います。バトル系のマンガが好きじゃない人って、けっこういると思う……というか、マンガ好きな人ほど「バトル系はどうでもいい」ということが多い気もするんですが、『カグラバチ』はそういう人たちも取り込める可能性を感じますね。戦いのシーンに関しては、刀の使い方と妖術の組み合わせ方もカッコいいです。

——主人公のチヒロのキャラクターについてはどうですか?

 ただの“いいヤツ”ではないんですよ。もちろん魅力的なんだけど、「俺についてこい!」みたいなタイプではなくて、暗いものを背負っているじゃないですか。その上刀を使う寡黙な実力者……となれば、厨二病的なイタいキャラクターになりかねないのだけれど、そうなっていないのがすごいですね。

——今後の展開としては、父を殺したヤツらを探して、盗まれた刀を取り戻す……という感じでしょうか。

 そうでしょうね。言ってしまうと『ドラゴンボール』と同じような“回収系”かもしれない(笑)。おそらく、各地に散らばっているであろう刀を1本ずつ取り戻していくなかで、強敵に出会って、ときにはライバルと戦い、仲間も出来ていく。主人公は強くなって成長していくんだけど、「自分は何のために復讐しようとしているのか」みたいな葛藤もありーーと、どんどん話が広がっていくのが既に感じられるので、とにかく続いてほしいですね。今年に入ってから始まった連載でも、既に終わってしまった作品もいくつかあるので、僕らもちゃんと応援しないといけません。

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