OKAMOTO’Sオカモトショウはなぜ『Dr.STONE』に魅了されたのか 「従来のSFの枠に収まりきらない面白さがある」

オカモトショウが語る『Dr.STONE』の凄さ

 ロックバンドOKAMOTO’Sのボーカル、そして、ソロアーティストとしても活躍するオカモトショウが、名作マンガや注目作品をご紹介する「月刊オカモトショウ」。今回は、アニメ第3期・第2クールの放送が迫る人気作『Dr.STONE』(原作:稲垣理一郎、作画:Boichi)について語ってもらった。旧作から現行の連載作品まで、数多くの作品に通じている彼が、なぜいま“ジャンプ作品”という王道の大ヒット作を取り上げるのか。そこには深い思い入れがあった。

『Dr.STONE』

ーー今回は『Dr.STONE』について伺います。OKAMOTO’Sはアニメ第3期・第1クールのエンディングテーマ「Where Do We Go?」も手がけており、思い入れの深い作品だと思いますが、本作の第一印象はどんなものでしたか?

 最初に『Dr.STONE』を読んで思い出したのが、小学校のころに図書館にあった『ドラえもん』の「ふしぎ探検シリーズ」。スモールライトで小さくなって、体の中を探検して、赤血球や白血球がどういう働きをしているかを学ぶ……みたいな学習漫画のメッチャ面白いやつ、という印象でした。科学に対するワクワクって、人類共通だと思うんです。専門的な知識も交えて、それをエンタメにできているのが本当にすごいなって。

ーー何もないところからのサバイバル、というだけでなく、そこから現代に近いレベルの科学技術を実現しようというところが画期的でしたね。

 そうそう。水車とか風車なら、僕らにも仕組みがだいたいわかるじゃないですか。でも、スマホが具体的にどうできているかなんてわからないし、いま科学が失われたら、自分には再現なんてできない。完全にロストテクノロジーになると思うんですけど、『Dr.STONE』を読んでいるときだけは、なんかわかった気になれて(笑)。従来のSFの枠に収まりきらない面白さのある作品だと思います。

 もちろん、本来は専用の機械と工場がなければできないような精密な加工をできる人がいたり、奇跡的な条件が重なるようなエンタメ作品らしい展開はありますが、それでも基本的な原理は押さえられているので、「知識があればこんなことを起こせる可能性があるんだ!」と思える。子どもが科学に関心を持つきっかけとして最高ですよね。

ーーショウさんは、原作者の稲垣理一郎さんが手掛けたアメフト漫画『アイシールド21』(作画:村田雄介)もお好きだったそうですね。

 そうですね。考えてみると、キャラクターを立たせた上で、アメフトの戦略的な部分に焦点を当てていたところが、『Dr.STONE』に通じる魅力だったかもしれません。いわば「力」ではなく「理屈」で戦うところがあって、いまは『ブルーロック』(原作:金城宗幸、作画:ノ村優介)のようなスポーツ漫画にも、『日本三國』(松木いっか)のような歴史・戦記モノにもそういう作品が増えていますが、それを先取りしていたような気もしますね。

ーー『Dr.STONE』に話を戻すと、本作のどんなところが一番好きですか?

 主人公の千空が科学を信じる理由が、単純に「便利だ、快適だ」ということだけでなくて、人類が好奇心や仲間を思う気持ちで積み上げてきたものだからなんですよね。千空のそういう姿勢に惹かれて、みんながついていく感じがすごくよくて。それは「Where Do We Go?」を書かせていただく上でも大事にしたことでしたね。

OKAMOTO'S『Where Do We Go?』OFFICIAL MUSIC VIDEO

ーーショウさんは「Where Do We Go?」のなかで、それを<愛>と表現していますね。一見、「科学」という言葉からは遠い概念ですが、そこには多くの人々が積み重ねてきた歴史とともに、実は“体温”が感じられるというか。

 そうなんですよ。科学は仮説を立てて、検証して……という繰り返しで発展してきたもので、めちゃくちゃ大変な作業だし、その意味では人の営みの歴史そのものだと思うんです。千空は先人たちの“思い”ごと受け取るようにバトンを引き継いだわけで、芸術もそうだと思いますが、人類にとって大事な文脈が詰まったDNAになっている。そこがちゃんと描かれているのが素晴らしいと思うし、自分に子どもがいたら読んでほしい作品だなと。例えば「コロコロコミック」を卒業して「少年ジャンプ」に入るくらいの年齢で、わかりやすいギャグ漫画や純粋なバトル/ファンタジー漫画もいいけれど、現実につながる知的好奇心を刺激してくれる『Dr.STONE』のような作品に出会えるのは最高ですね。

ーーあらためて、そんな思い入れの深い作品でご自身の楽曲が流れるというのは、どんな体験でしたか?

 もう、うれしさしかなかったですね。本当に好きな作品で書きたいことが山のようにあったから、ギターのコウキと3〜4曲作って、アニメの制作サイドに選んでいただいたんですよ。もっとテンポのいい少年漫画らしい曲もあったんですけど、選ばれたのが一番ヘヴィで渋い「Where Do We Go?」で。僕らのことを信頼して声をかけてくださったんだな、ということが伝わりましたし、作品の内容に寄せるどころか、「もう少し距離をとっていただいて」と言われたくらいで(笑)。

ーー確かに、「アニメの主題歌」というより、やや退廃的でシビれるOKAMOTO’Sのロック、というイメージでした。ただ同時に、冒頭の<千の時を越え/受け継がれたバトン>というフレーズから、すでに『Dr.STONE』への愛情が溢れていますね(笑)。

 出ちゃってますよね(笑)。僕は原作ファンで、最後まで読んだ上でこの曲を書いているので、アニメで追いかけている方は、ぜひ物語のエンディングを見届けた後に、またこの曲を聴いてみてもらいたいです。もっとグッとくる仕上がりになっていると思うので。

TVアニメ『Dr.STONE NEW WORLD』第1クールED<Where Do We Go?>ノンクレジット映像

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