なぜ『ロードス島戦記』人気は衰えないのか? 新作スピンオフウェブトゥーンから読み解く水野良の“新作”ファンタジー

なぜ『ロードス島戦記』人気は衰えないのか

 水野良による大人気ファンタジー『ロードス島戦記』がウェブトゥーンになった。電子コミックサービス「LINEマンガ」で配信が始まった新作スピンオフである『ロードス島戦記:死霊の女王』は、魔法王国カストゥールの滅亡から物語がスタート。平和になったかに見えた世界を脅かす死霊の女王に、大切な人を奪われた男の戦いが、ウェブトゥーンならではのダイナミックな展開とフルカラーで繰り出されて読む人を引きずり込む。配信初日に「LINEマンガ 総合ランキング」で第1位(2026年7月31日時点)を獲得したことからも、その注目度の高さが窺える。

 湖上都市ルノアナが燃えている。カストゥールのサルバーン王による圧政に耐えかねて蜂起した人々が、剣を取り、旗を立てて王のいる城へと迫る。群がるグールを風の部族の戦士が切り裂き、炎の部族の精霊使いが炎で焼き尽す中で、ひとり玉座に座るサルバーン王にひとりの女性が「偉大なるカストゥール王国の統治もどうやら今日でおしまい」と語りかける。

 ところが、サルバーン王は「構わん」と答え、ニヤリと笑って「すでにわしの望みは叶った」と言いながら、自分が「不死の王 No-Life-King」となったことを対峙する女性に気づかれる。そして、「さらばだ、アルナカーラ・イネス・ル・フェイン」と女性の名を呼びながら、城の奥へと消えていく。

 不死の王と灰色の魔女。『ロードス島戦記』のシリーズに名を残し、影響力を与え続ける存在の姿を、フルカラーの美麗な絵によって見せてくれているということだけでも、『ロードス島戦記:死霊の女王』に興味を惹かれるファンは多いだろう。シリーズ中で伝説として語られる古代魔法王国の終焉を、目の当たりにできるといった興奮に心躍らせる人もいるかもしれない。

 もっとも、物語はその後の不死の王と灰色の魔女が、それぞれの道をどのように歩んでいったのかといった展開には向かわない。カーラに別れを告げた後、サルバーンは城の地下で待っていたネクトレラという女性に、太守の証である杖を渡して「これからお前の知恵と力を振り絞り…この島の運命を決めるがよい」と告げて去る。

 なんと苛烈な王位の継承。今まさに滅びようとしている国を譲られていったい何ができるのか? けれども、ネクトレラが歯噛みしていたのは一瞬で、すぐに杖を握りしめ、憤怒の表情で「私から奪ったすべてのものを取り戻してやる」と呪いに等しい誓いを立てる。打ち出されるのが『ロードス島戦記:死霊の女王』というタイトル。そこまでをプロローグとして、物語はサブタイトルにあるような「死霊の女王」との戦いへと突き進んでいく。

 ここで触れておくなら、何かを決意するまでのネクトレラの表情が凄まじくも美しい。タテ読みの画面にバンと映し出された表情に、おそらく物語のラスボスになる女性だろうと知りながら、魅入られてしまいそうになる。

 もちろん、物語自体もスリリングだ。カストゥールが滅びたことで圧政を逃れ、平穏な日々が訪れたある村で、テインという若者がモンスターから村を守るために必要な剣術の稽古に励んでいた。決して強くないテインに隊長は厳しく当たっていたが、セラフィンという少女はテインに優しく接し、テインもそんなセラフィンにいつか恋心を打ち明けようと思っていた。

 そんなある日、村を大量のグールが襲い大勢の村人が惨殺される。立ち向かった隊長は現れた屈強な男によって斬り伏せられる。テインも致命傷を負うが、その彼をセラフィンが魔法で治療しようとしていたところを、遠くで見ていた誰かがセラフィンを連れてくるよう屈強な男に命じる。セラフィンはテインの元から連れ去られ、そして彼女を連れ戻そうとするテインが、出会ったエルフやその同行者と共に旅に出る物語が幕を開ける。

 セラフィンの身に起こったある出来事によって、優しかった表情がなかなか獰猛なものに変わるが、それがネクトレラと同様に人の心をくすぐるものになっている。テインの村を襲った長髪の男も、その放たれる強さに惹かれてしまう。『ロードス島戦記』のヒロインのディードリッドと同じ髪と耳を持つエルフの女性も美しいが、悪役の側に妙な存在感があるところが、描き込みの可能なウェブトゥーンならではのものか、精鋭が集まった作画陣の力量によるものか、気になるところだ。

 絵でいうならバトルシーンも凄まじい。タテ長という画面がバトルシーンを描くのに適していないなどということはないのは、ウェブトゥーンを代表する世界的な大ヒット作『俺だけレベルアップな件』が証明している。斬りかかっては迎え撃ち斬り返していく連続を、すいすいとスクロールさせながら見ていくうちに、キャラが動いているかのように思えてくるから面白い。

 目を動かして読むのと違い、画面が動くことで視線を釘付けにしたまま物語の世界へと引き込むウェブトゥーンが、名高き『ロードス島戦記』の世界へと読者を連れて行ってくれる。そんな作品だ。

 物語は端緒についたばかり。その身に驚くような存在を宿し、いつ暴走してしまうかもしれない不安を抱えながら旅に出たテインの一行が巡る場所は、カストゥール王国滅亡直後というなかなか描かれてこなかった世界だ。見るものも起こることもすべてが長大で壮大な『ロードス島戦記』の歴史になっていく。自分が歴史の生き証人となりながら味わう物語は格別だ。

 もちろん、『ロードス島戦記』の世界を知らなくても、混乱する世界を悪意で支配しようとしている存在がいて、それに立ち向かう青年がいて、様々な人と出会いながら剣を振るい魔法を駆使して冒険していくファンタジーの“新作”として楽しめる。そうやって開かれた扉から、ライトノベルの歴史を開いた『ロードス島戦記』の世界へと引きずり込まれることだけは確実だが。

■作品情報
『ロードス島戦記:死霊の女王』
原作:水野良
脚色:Southern Camel
作画:Blanton
LINEマンガで配信中作品URL:https://manga.line.me/product/periodic?id=S162644
©️STUDIO WHITE / REDICE STUDIO・LDF・KADOKAWA

■作品情報
『ロードス島戦記:死霊の女王』
原作:水野良
脚色:Southern Camel
作画:Blanton
LINEマンガで配信中作品URL:https://manga.line.me/product/periodic?id=S162644
©️STUDIO WHITE / REDICE STUDIO・LDF・KADOKAWA

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