OKAMOTO’Sオカモトショウ連載『月刊オカモトショウ』
OKAMOTO’S・オカモトショウ、話題作『本なら売るほど』をどう読んだ? 「マンガ大賞2026」を語る

ロックバンドOKAMOTO’Sのボーカル、そして、ソロアーティストとしても活躍するオカモトショウが、名作マンガや注目作品をご紹介する「月刊オカモトショウ」。今回のテーマは、ショウも審査員をつとめた「マンガ大賞2026」。大賞受賞作の『本なら売るほど』(児島青)のほか、『邪神の弁当屋さん』(イシコ)、『RIOT』(塚田 ゆうた)を紹介します!
——今回のテーマは「マンガ大賞2026」。今年のランキングは大賞が『本なら売るほど』(児島青)、2位『「壇蜜」』(清野とおる)、3位『邪神の弁当屋さん』(イシコ)、4位『おかえり水平線』(渡部大羊)、5位『友達だった人 絹田みや作品集』(絹田 みや)、6位『怪獣を解剖する』(サイトウマド)、 7位『路傍のフジイ』(鍋倉夫)、8位『サンキューピッチ』(住吉九)、9位『RIOT』(塚田 ゆうた)、10位『魔男のイチ』(原作:宇佐崎しろ・作画:西修)、11位『人喰いマンションと大家のメゾン』(原作:田中空・作画:あきま)、12位『妹は知っている』(雁木万里)です。今年はかなり票が割れて、大接戦でした。
票が割れたのは、「2025年はこれ!」という大ヒット作がなかったからでしょうね。自分も投票させてもらいましたけど、かなり悩んだので……。ただ、この順位を見ると納得ですね。面白いマンガばかりだし、大賞の『本なら売るほど』もすごくいい作品なので。やっぱり「マンガ大賞」は信頼できるなと思いました。今回挙げさせてもらた3作品は特に好きでしたね。
『RIOT』は『ONE PIECE』みたいに仲間が増えていくのも楽しい
——では、ショウさんおすすめの3作を紹介していきましょう。まずは『RIOT』。海が見える穏やかな田舎町で暮らす令和の高校生たちが、ZINE(商業出版ではない、自主的な個人・グループによる小冊子)作りに熱中する物語です。
最近だと『これ描いて死ね』(とよ田みのる)もそうですけど、10代の子たちがモノ作りに夢中になる系のマンガですね。『RIOT』は雑誌好きの二人の少年(シャンハイ、アイジ)がZINEを作るんですけど、まず2人ともめちゃくちゃピュアなんですよ。喫茶店にある「POPEYE」や「BRUTUS」が大好きで、真っ直ぐに憧れてて、自分たちで作ってみようぜ! って盛り上がって。
ZINEが流行ってからしばらく経ってるし、読者のなかには「はいはい、ZINEね」みたいな人もいるかもしれないけど(笑)、シャンハイとアイジはまったくスレてなくて、「作りたい!」という情熱だけで突き進む。やり方もよくわかってないし、効率とかも考えてないから、ほとんどが手作業なんですよ。雑誌を切り貼りして、コラージュみたいな感じでページを作って、コピー機を使って冊子にするっていう。言ってみれば、図工の授業の知識のなかでやってるんですよね。
——確かに(笑)。
今はテクノロジーが進んで、パソコンやスマホで何でもできるけど、自分の手で何かを生み出す喜びは忘れないほうがいいと思うんですよね。俺らがバンドを始めたときもそうですけど、何にもわからないのにめちゃくちゃ楽しかったし、「世界でいちばんイケてるっしょ」って自信満々で(笑)。そういう喜びをめっちゃ描けてるんですよね、『RIOT』は。
——東京ロッカーズをモデルにした映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』でもファンジンを作るシーンが描かれていましたけど、情報過多の社会だからこそ、自分たちで雑誌を作ることへの憧憬があるのかも。
そうそう。文章担当のシャンハイ、デザイン担当のアイジからはじまって、その後、写真を撮ってたケーコが加わって。『ONE PIECE』みたいに仲間が増えていくのも楽しいし、ライバルも登場するんですよ。都会でZINEを作ってるヤツらなんだけど、そこからの展開も熱くて。絵柄にもすごく手描き感があって、それが物語のテイストと合ってるんですよね。マンガ大賞にノミネートされたことでこのマンガを知った人も多いと思うし、この先も楽しみです。
『邪神の弁当屋さん』はいい歌をじっくり聴いたときの感覚に似ている
——続いては『邪神の弁当屋さん』。2024年10月から「コミックDAYS」で連載がはじまり、既に完結しています。
すごくいい漫画でした。主人公はレイニーという女の子なんだけど、じつはソランジュという神様で。戦争を引き起こす原因を作ってしまったことで謹慎を命じられて、人間の世界でお弁当屋さんをやってる設定なんですが、まず、絵柄と内容のギャップがいい。ファンタジーというか、絵本みたいな可愛さがあるんだけど、物語はかなりシリアスなんですよ。絵本って内容がエグかったりしますけど、『邪神の弁当屋さん』も同じような作りになっていると思います。
いろいろな解釈ができるんですけど、個人的には“神を支配している神”(創造主)の存在が大きいと思っていて。その構造自体は古くからあるものなんだけど、『邪神の弁当屋さん』の場合は、上位にいる神様がめちゃくちゃ幼稚で気まぐれなんですよ。そのせいで他の神様や人間たちに理不尽が降りかかる。それはどうしようもないことで、あとは“それをどう捉えて、どう行動していくか”じゃないですか。たとえば何かの事件で被害者になったとして、ずっとそのことを引きずったまま生きるわけにはいかない。どこかで踏ん切りをつけて、自分の人生を生きなくちゃいけないじゃないですか。ちょっと抽象的ですけど、『邪神の弁当屋さん』にはそういう哲学的ことも含まれているような気がして。勉強になるというか、ためになるマンガだなと。
——お弁当屋さんとしての日常も、この作品の読みどころですよね。
お弁当、ちゃんと作ってますからね(笑)。お弁当箱におかずを詰めるという行為にも意味があって。心の空白とか喪失感を埋めて、また明るい毎日を取り戻す……みたいなところにつながっているのかなと。ちゃんとゴハンを作って食べるって、すごく大事じゃないですか。そういうことも含めて、すべてのバランスが絶妙なんですよね、このマンガは。いい歌をじっくり聴いたときの感覚に似てます。
大賞『本なら売るほど』は人間の根底にある愛情がしっかり描かれている
——3作目は大賞受賞作『本なら売るほど』。ひっつめ髪の気だるげな青年が営む古本屋「十月堂」を舞台に、本と人を巡る物語が描かれます。
これもすごく面白かったです。『RIOT』と同じくアナログ回帰の流れのなかにあるマンガというか、古本屋自体が“人から人へ”、“手から手へ”という場所じゃないですか。人間の根底にあるアナログなものへの愛情がしっかり描かれているし、とにかく一つ一つのエピソードが素晴らしいんですよ。あまり言うとネタバレになっちゃうんだけど、“漢和辞典”のエピソードがあって。世界最大の漢和辞典を売りに来た人がいて、「これは貴重ですね」という感じで買い取る。ただ、辞典っていうのは古本屋にとっては厄介なものだったりもするんですよ。
——場所を取るのになかなか売れないっていう。
そうそう。『本なら売るほど』では漢字好きの青年に引き継がれるんですけど、それまでのやり取りがすごくいいんですよ。質屋のエピソードもよかったです。出版社の“束見本”(本の厚みなどを把握するために作られる製本サンプル)を質屋に何度も持ち込んでいる高齢の方がいて。その人は「若いときに自作の小説で賞をとったことがある」と言ってるんだけど、あるとき、束見本を質に入れたまま取りに来なくなる。で、古本屋に売りに来るんですけど、最後まで読むとすごく繊細なヒューマンドラマになっているんです。もちろんしっかり取材していると思うんですけど、実際に経験しないと書けないのでは?というリアリティがありますね。決して派手さはないですけど、すごく深みのある作品だし、これからもじんわり読者を獲得していくんじゃないかなと。
——「マンガ大賞」には、質の高いマンガを紹介する役割もありますからね。
いい漫画、めっちゃあるので。「週刊少年ジャンプ」でも新しい連載がどんどん始まってるし、今は過渡期なのかなと。次にどんなマンガがヒットするのか? がポイントでしょうね。
『本なら売るほど』を読みながら聞きたい音楽
ルー・リード『トランスフォーマー』
名曲「ワイルドサイドを歩け」が入っているアルバム。「ワイルド~」もそうなんですけど、ニューヨークにいる人たちの姿がリアルに描かれていて。「本なら売るほど」の繊細なヒューマン・ストーリーに通じるところがあると思います。
























