「この世には不思議なことなど何もない?」ツタンカーメンの呪い、古代技術、超能力者……”超常現象”を考察する

超能力者はどうなのか?

  メディアに登場する超能力者は少なくない。例は色々いるが、テレビシリーズ『ミディアム 霊能者アリソン・デュボア』の主人公にもなったアメリカの超能力者アリソン・デュボア氏を挙げておこう。

 デュボア氏はテキサスレンジャーと協力して疾走者発見に貢献したということでテレビドラマにもなっているが、他ならぬテキサスレンジャーが「彼女が協力した事実は無い」と否定している。彼女の予言自体もかなり怪しい。2005年8月に始まり、2006年の6月の終わりまで続いたベースライン・キラー事件は9人が殺害され、レイプも含めた被害者は全部で33人にものぼった凶悪事件でデュボア氏の地元であるアリゾナ州フェニックスで起きた。

  彼女は事件に対して透視を行ったが「犯人は長い髪を帽子に押し込んでいる」=「犯人のマーク・ゴードーは短髪だった」「容疑者が浮浪者でアリゾナ州を去っている」=「全く当たっていなかった」。他の凶悪事件でも彼女の透視結果は全く当たっていないことが判明している。また10代の頃からの親友の死を予言していたというエピソードもあるが、これについては、その親友の妹からホラ話だと指摘されている。

  彼女に限らず、有名な超能力者は残念ながら実際に予言内容を吟味するとほぼ外れている場合が、筆者の知る限りすべてである。少なくとも、メディアに自分から姿を晒している超能力者に本物がいる可能性は低そうである。なお、デュボア氏は前述のランディ氏の「100万ドル超能力チャレンジ」に招かれたが辞退している。

  また、一般的に知られた超能力として、ダウジングがある。ダウジングは地下水や貴金属の鉱脈など隠れた物を、棒や振り子などの装置の動きによって発見できると謳う手法だが、比較実験をしたところ、ダウジングで水脈や鉱脈を探り当てる確率はあてずっぽうとほぼ同じ確率であるとの結果が出ている。ダウジングに使うロッドが動くのは、同じ姿勢を取り続た結果筋肉が疲労しておきる「不覚筋動」であるとの説が有力だ。ロッドが動く理由は人体に秘められた超能力ではなく、疲労による本人の予期せぬ動きと考えた方が自然だろう。コックリさんも同じ原理であろうと考えられている。

この世には不思議なことなど「それほどは」無いのか

  さて、かなりロマンが覚める話をしてしまったが、明確に謎が解けてない有名事件もある。1959年のロシアで起きたディアトロフ峠事件はその最たる例である。9人の若い男女が真冬のウラル山脈に登山に行って死亡した事件だが、真冬の雪山にも関わらず遺体が衣服を脱ぎ捨てていたり、火傷を負っていたり、舌や眼球を失っていたりとまさに全員が「変死」を遂げていた。しかも、残された衣服が自然界ではありえないほどの放射能を帯びており、様々な憶測と陰謀論が発生した。

松閣オルタ『オカルトクロニクル」(洋泉社)

  今のところ、ヘアピン渦という極めて稀な自然現象が原因説がいちおう有力だが、これが完全な謎解きになっているかは微妙なところである。オカルトマニアの松閣オルタ氏は、ロマン派でも懐疑論者でも無い中間の立場を取っているが、氏の著作である『オカルト・クロニクル』は莫大な資料から有名オカルト事件を紐解いており、読み応えたっぷりだ。ディアトロフ峠事件も紹介されている。

 京極夏彦氏の人気シリーズ「百鬼夜行」シリーズで主人公の京極堂は「この世には不思議なことなど何もないのだよ、関口君」と語っていた。同シリーズの特徴は京極堂が怪奇現象に(一応の)合理的な解釈を見出すところにある。謎が解けていない現象あることから、実際は「この世には不思議なことなど『それほどは』無い」が正確なところだろう。

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