「この世には不思議なことなど何もない?」ツタンカーメンの呪い、古代技術、超能力者……”超常現象”を考察する

ナスカの地上絵、モアイ像、コスタリカの石球――古代技術では不可能な「伝説」

  これらはいずれも世界遺産であり、今後も残さなければならない人類の宝である。古代の遺物でありながら、精巧で見事な創造物であり、驚異と言う他無い。
 しかし、だからと言って「オーパーツ(その時代の文明にそぐわない古代の出土品。 当時の技術では製作が不可能と考えられる加工品など)」だと主張するのは安易すぎる。


  まずは、上空からでなければ全体像を確認することの出来ない巨大な「ナスカの地上絵」だ。紀元前2~後7世紀の遺物であり、古代の人類がそのような物を作ったことはただただ驚異である。

桐生操(著)『世界ミステリー・ツアー』(東亜同文書院)

 懐疑論者と対照的なロマン派的立場の著作は山ほどあるが、筆者の手元にある桐生操(著)『世界ミステリー・ツアー』には「足場を空中に置かなければ描けない」と書かれている。

  その見解にはロマンがあるが、残念ながらそんなことはない。

  パンタグラフという下絵を拡大・縮小するための製図用具があるが、パンタグラフの仕組みはかなり原始的で、原理さえ解っていれば古代の技術でも十分再現可能である。似たようなものを古代人が思いついていても不思議ではないだろう。

  また、もう少しロマンのある説として、気球から全体像を確認したとの説もある。熱気球の仕組みはかなり原始的なので、これもあり得ない話ではない。こちらの説は人気コミック『Dr.STONE』でも紹介されていた。

  イースター島のモアイ像も、有名な古代の驚異である。モアイ像は遅くとも10世紀にはつくられていたと判明しているが、小さいものでも20トンはある。石切り場からモアイ像が建てられてい場所は遠いものだと8kmほど離れている。当時でも可能な原始的方法として、木のソリやコロなどを使って運んだと考えられているが、『世界ミステリー・ツアー』では「火山島であるイースター島にはコロやソリにつかえる頑丈な木は生えていないのだが…」と締めくくられている。

  たしかに、今日のイースター島には十分な森林資源が存在しないが、それはあくまでも「今日の」話である。イースター島にはかつては森林資源があって、それが13世紀ごろに枯渇したという説が有力である。今のイースター島は不毛の地だが、かつてはモアイを運ぶのに使えるような木材があったと考えるのは不自然ではないだろう。

  最後にこちらも世界遺産、「コスタリカの石球」はコスタリカ共和国ディキス地方の遺跡であり、古代の驚異である。西暦300~800年ごろに作成されたとされる、真球(完全な球体)に近い精度の石の球が200個以上発見されているが、それらは1000年以上前のもので、当時のコスタリカには鉄すらなかった。真球は出来にはバラツキがあるが、大きい物は直径2.5キロ、特に精巧なものは最大誤差が0.2パーセントしかない。

 「現代技術でもつくれない」と『世界ミステリー・ツアー』には書かれてるが、そんなことはない。過熱と冷却を繰り返すと岩は削りやすくなる。その原理を利用し、手作業で、なおかつ石器でも時間をかければ精度の高い真球は十分作れることが実験で判明している。実際、日本のテレビ番組『特命リサーチ200X』が日本の石材加工業者に依頼して実験を行い、成功している。

  また、有名なオーパーツだと他に、「古代のロケット」と言われているパレンケの石棺は、絵を見る角度が誤りであり、当時の世界観を著した宗教画。古代の技術で制作不可能とされている「クリスタル・スカル」は古代南米の遺物ではなく、19世紀後半から20世紀にドイツの職人街で作成されたものであるとの説が有力である。いずれもあまりロマンのある話ではない。

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