AIが画像生成した“美少女“写真集が発売、“グラビアモデル“の仕事もAIに奪われる?
「どこかがやるのは時間の問題だと思っていたけれど、まさか集英社とは。率直に驚きました」
こう話すのは、ある芸能事務所の社員A氏である。A氏が言及するのは、集英社が5月29日に発売したグラビア写真集『生まれたて。』である。かわいらしいグラビアモデルの名前は「さつきあい」というが、実はAIが創り出した実在しない“妹系美少女”なのである。同社の週刊誌「週刊プレイボーイ」編集部が画像生成して生み出したという。
A氏が勤務する事務所では、これまで著名なグラビアモデルが在籍してきた。「AIはまだ脅威ではない」と言いつつも、こう分析する。
「既に雑誌では、声優やコスプレイヤーがグラビアモデル的な扱いになっていて、私たちが得意とする昔ながらのいわゆるグラビアモデルの活躍の場が少なくなっています。コスプレイヤーが出てきた時は、そんな大したものじゃない一過性だと内心バカにしていたんですよ。しかし、瞬く間に支持を集めて無視できない存在になったし、今では人気があるのにも納得がいく。AIもそういう存在になるかもしれない」
A氏は、AIに反発を抱く層は一定数いると指摘しつつ、「AIという枕詞がつくから嫌う人も多いかもしれないけれど、アニメキャラやVTuberなどと変わらないような存在。実在しない人物に恋愛感情を抱いたり、ファンになる例はごくごく普通にある」と話す。とりわけアニメや漫画のファンが多い日本では、元来、実在しない人物に対する抵抗感が薄い。その傾向は若い世代ほど顕著といい、今後ほかの出版社や企業が追従すれば、コンテンツとして広がりを見せるのではないかと考察する。
SNSで指摘されるのが、指先の表現がおかしいなど、AIの技術が不完全ゆえの違和感である。しかしA氏は、「そこまで気にして見るのは極めて少数派なのでほぼ関係ないし、どうでもいいのでは。それにAIの技術は進歩するだろうし、身体の表現がおかしいなどの問題は改善されていくでしょうから、近い将来は人間の写真と遜色ないものができるでしょう」と指摘する。
AIのグラビアモデルは、実はファンにとってみればメリットが大きい。最大のポイントはスキャンダルが発生する可能性が皆無ということだろう。これは多くの人がAIのメリットとして挙げており、「恋人がいた!」「熱愛発覚!」などと“文春砲”が炸裂することがない。
「裏切られた」という問題とは無縁なので、安心して応援できる。ヴァーチャルな存在なので塩対応されることもない。こういった理由で「「二次元の方が好き」という人は少なくないのだ。
A氏は出版社側にとってもAIを起用するメリットはたくさんあり、今後は雑誌のグラビアを飾る可能性を指摘する。では、人間のグラビアモデルはどうすればいいのか。
「ひとつは、単に容姿だけではないキャラクター作りを徹底する必要があります。個性がいっそう重視されるようになると言うことですね。さらに、ファンサービスの徹底です。これは生身の人間でなければできないことですし、コロナ禍も終わりを迎えたので、ファンと触れあう機会も増えていくでしょう。ファンの心を掴む企画を、事務所も一体となって考えていく必要があります」