漫画家・ユキヲのツイートに賛否両論  AI絵師の作品は「描いた」ことになる? それとも「出力」?

漫画家・ユキヲのツイートに賛否両論

ユキヲのツイートが議論の的に

 『邪神ちゃんドロップキック』『武蔵野線の姉妹』などの代表作をもつ漫画家・ユキヲのいわゆる“AI絵師”に対するツイートがTwitterで話題になり、賛否両論、様々な立場から意見が寄せられている。

 ユキヲはTwitterで「AIを使ってイラストを『描いてる』ってのはちょっと違うよなー。『出力してる』とかになるんじゃないのかな」とツイート。これには多くのAI絵師やAI肯定派・否定派様々な立場の人が反応した。

 ユキヲに批判的なコメントとして、「自分としては心で描いてます。可視化、表面化をAIにやってもらっています」「絵師のプライドからくる言葉遊びもいつまで残るかなという気はする」などの意見があった。

 しかし、記者がTwitterを見る限りでは、「ユキヲ先生はおかしいことを言っていない」「AIは描いているとは言わんだろ」「ユキヲ先生は何も間違ってないねコレは。AI絵師側が過剰反応するのは深層心理で後ろめたさがあるからではなかろうか?」と、ユキヲに賛同する人の方が多い印象だ。

デジタルの絵描きはアナログでも絵が描ける

 かつてイラストの分野でデジタルが普及し始めたとき、一部のアナログ派の絵描きから批判があった。これはカメラの分野でもフィルムからデジタルに移り変わるときに批判があったように、新しい技術が普及する際はつきものといえる。

 こうした事実を例に挙げ、「AIも絵を描くツールが異なるだけで、絵を描いていることは同じ。アナログがデジタルになったような正常な進化ではないのか」と考える人もいるようだ。しかし、AIに関してはちょっと事情が異なるのではないか。

 例外もあるものの、デジタルでイラストを描く人はアナログでもほぼ同様に絵が描けるケースが多い。対して、AI絵師はそれができない。AI絵師の仕事はどちらかと言えば、ペンを使って手を動かして作るというよりは、適切な言葉を使って指示を出す仕事に近い。いわばライターの仕事のような要素がある。したがって、絵を「描く」行為とはまた別物なのではないかと記者は考える。

 記者はユキヲの意見に賛同しており、AI絵師の作品は「出力」もしくは「生成」などと表現した方が適切であるように思う。ただし、記者はAIを否定しているわけではないし、それはユキヲも同様であろう。「描く」という言葉に違和感を覚えているだけだ。

迫るAIの出版界への進出。これからどうなる?

 それにしても、記者が気になるのは、今後問題になるであろう漫画やイラストの新人賞の審査についてである。海外ではAIに作成された小説や写真、絵画が賞に入賞してその是非が議論になっているが、日本の出版社もいずれガイドライン作成が必要になるであろう。既に活動しているクリエイターがAIを使い始めた際も同様である。

 いわゆるAI絵師が従来の出版社、漫画界、イラストレーション界でどのように評価されていくのか。もしくはAI絵師が集まって別の団体なりを作って、活動を本格化していくのか。今後の動向から目が離せなくなっており、ユキヲのツイートはそうした議論を活発化させる一端になったといえるだろう。

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