『明日カノ』『TSUYOSHI』などヒット作続々「サイコミ」の強みとは? 編集長・葛西歩×開発ディレクター・高超インタビュー
リニューアルまで約1年半……迅速な開発の裏側
――Web版リニューアルは約1年半という短期間で開発されたそうですが、ここまで迅速な開発に成功できた理由とはなんだと思いますか?
高:やっぱりチーム内での密なコミュニケーションではないでしょうか。Web版リニューアルは2021年5月頃に企画が発足したので、開発期間中はコロナ禍ということもありリモートワークを余儀なくされました。また、集まったメンバーもこれまでは他のゲーム開発をしていた方がほとんど。けれど、そういった体制の中でも気軽に会話や質問ができるチャット部屋を作成することで、円滑なコミュニケーションが進められるような空気感を醸成していきました。
――開発メンバーは、これまでゲーム開発をされていた方がほとんどだったとのことですが、ウェブ漫画配信サイトという新たな領域に対してのギャップはなかったのでしょうか。
高:技術的なギャップはありませんでしたね。バックエンド、フロント……それぞれ担当するサービスが変わっても技術的なものは変わらないので。ただ、やっぱりゲームとウェブ漫画配信サイトでは最終的にユーザーに提供する内容はもちろん、アウトプットも大きく異なります。だから、その辺りにギャップを抱く方もいたかもしれませんが、集まったメンバーはみんな漫画が大好き。好きが高じてか、ウェブ漫画配信サイトへの理解、知見もあるメンバーばかりだったので、細かい仕様や完成形についてもお互いの意思疎通が早い。ですので、基本的にはとても進めやすかったですね。
――漫画好きのメンバーが開発しているとは大変心強いですね。
高:あと、Cygamesならではの開発体制で「ノンストップ開発」というものがあります。これによって、ユーザーさんからのフィードバックがあったらすぐに対応・修正できるんです。企画から開発、運用までを社内で一気通貫して行なっているCygamesだからこそできる体制ですね。
編集部と開発のコミュニケーションとは
――Web版リニューアルを進めるにあたり、開発チームと編集部はどのようなコミュニケーションを取られていたのでしょうか。
高:まず、開発に入る前に、完成イメージのラフを編集長と副編集長に共有していました。デザインはもちろん、仕様についても細かく伝えて、ラフ案をもとにアドバイスというか、ユーザーにとっての懸念点など指摘してもらいました。イメージとしては、編集長と副編集長はこのプロジェクトの監修者です。
葛西:Web版用の掲載データを作成するなど、そういった細かい準備作業は途中でいくつか発生しますが、基本的に編集部が開発に関わるのは高が話していたように一番最初の段階。あとは、リリース直前に触り心地を確かめる最終のタイミングです。
――特に話し合いを重ねた箇所がありましたら教えてください。
葛西:どの機能も時間をかけて話し合いましたが、特に各作品のトップページに関しては、何度も議論を重ねましたね。デバイスによってはWeb版はアプリ版と違って画面が大きくなるので、バナーひとつとっても最適なサイズ感はどれなのか? など重点的に話し合いをしました。
――コンテンツを作る編集部、サイトや機能を作る開発チーム。作るものの領域が違うからこその衝突や、プロジェクトを推進する上での難しさはなかったのでしょうか。
高:衝突はありませんが、強いて言えば開発の順序というか、求められているものが一般的な開発と異なるのかなと感じたことはあります。例えば、新しい機能を開発する場合、ページの読み込み速度を早くするパフォーマンス改善は追って対応していくケースが一般的。ですが、ウェブ漫画配信サイトにおいて、ページの読み込み速度の遅さは、ユーザーにとって読書体験の質を下げることにつながります。なので、機能開発とパフォーマンス改善が同時に求められるという点での難しさはありましたね。
――今後の新機能開発についてはどのように検討して進めていくのでしょうか。
葛西:作家さんからのご要望、そして「サイコミ」に直接お問い合わせいただいたり、TwitterなどのSNSに投稿された機能改善にまつわるご要望は全部チェックしています。ですので、基本的には作家さんや利用者みなさまの声と、編集部や開発といった現場の声を集約して新機能を検討していければと思います。一方で、Web版もアプリ版も開発においてはやっぱり速度感が重要だと感じていまして。「サイコミ」が拡大してき、それに伴い関わる人数が増えてきた中で、いかにスピードを保ちながら開発ができるのか……。従来のやり方では通用しないと思うので、今後の開発の進め方については目下の課題ですね。