ドラマ『明日カノ』シーズン2のキーワードは“静かな恐怖”? 描かれるのは推し活を巡る洗脳と暴徒化、占いに心酔……

ドラマ『明日カノ』で描かれる“静かな恐怖”?

 ドラマ『明日、私は誰かのカノジョ』シーズン2が5月2日(火)より放送開始される。原作は累計500万部を突破したをのひなお氏による同名マンガで通称“明日カノ”。

 章ごとにヒロインが入れ替わり、レンタル彼女、整形、パパ活、ホス狂い……など現代社会ならではの事情に切り込みながらストーリーが展開される本作。5月2日(火)よりスタートするシーズン2では、原作の「洗脳編」(9~10巻)「What a Wonderful World編」(11〜13巻)にあたる物語が描かれる。そんな2つの物語の見どころを原作から紐解いていく。

キーワードは“静かな恐怖”

 「豚にデパコス」「被りは伝票で殺す」........人の心をえぐるような名言、いやパンチラインで読者を沸かしてきた明日カノ。ストーリーはもちろんだが、この各章に登場するパンチラインは本作の魅力の一つだ。これらのセリフはドラマ化でもしっかりと再現されており、生身の人間がそれらのセリフを吐く時、そこに感情が乗るからか、原作よりもさらに殺傷能力を増すところが恐ろしい。

 だが、今回の「洗脳編」「What a Wonderful World編」では“明日カノ”お馴染みのパンチラインは抑え気味。また、「豚にデパコス」と心の中で叫ぶ整形依存症のあやな、「被りは伝票で殺す」と言いながら笑顔でホストに貢ぐゆあてゃ.........それぞれの“カノジョ”たちが生きる世界に薄暗さはあるものの、喜怒哀楽がはっきりとしていたキャラクターが多いせいか、全体的にテンションが高くエンタメ感が強かったシーズン1。対して、今回のシーズン2で描かれる「洗脳編」「What a Wonderful World編」では、前回とは打って変わって“静かな恐怖”が付きまとう。

推し活を巡る、洗脳と暴徒化

 「洗脳編」の主人公は女子大生・留奈。大学に通う傍ら、学費や生活費を自分で稼ぐために高級ソープランド店で働いているというキャラクターだ。まだ20代と若いながらも、生きていく上で一番大切なものはお金だと考えている超現実主義者であり、夜の仕事もお金のためだと割り切って着実に大金を稼いでいる。

 自分をしっかりと持っている留奈。洗脳とは無縁に見える彼女だが、ある日お店に人気歌い手アイドル・隼斗がやってきたことで少しずつ何かが狂い始める。その根源は、歌い手として活動している隼斗とは切っても切り離せない“推し活”という文化にある。

 今日ではすっかり馴染みの言葉となった推し活。一般的には、推しの魅力や楽しさをファン同士で共有したり、ライブなどのイベントに行って推しを応援するなどのポジティブな面がフィーチャーされがちだ。けれど、留奈は隼斗と親密な関係となっていくにつれて“推し活の闇”を垣間見ていく事になる。

 例えば、推しの配信で競うように投げ銭をしたり、推しの失言や失態に対して過剰なほどに反応するなど、姿は見えないけれど、確かに感じるファンたちの熱狂。推しに対して盲目的になってしまうその様子は、どこか洗脳と近い匂いを感じてしまう。その熱狂具合に最初は小馬鹿にすらしていた留奈だが、“匂わせ写真”そして”特定班”といった推し活に付きまとう更なる闇へと巻き込まれていく。

 ーー全ては推しのため。そんな推しへの一方的な忠誠心によって暴徒化していくファンたち。前述の通り、全てのアクションがネット上で行われることから、顔が見えないという怖さがそこにはある。静かに、けれども確実に燃やされていく恐怖に直面することとなる留奈だが、その結末をぜひ見届けてほしい。

占いに心酔する40代女性、もう一つの洗脳

 「What a Wonderful World編」では、留奈が働く高級ソープランド店の先輩・菜々美こと江美が主人公。(※菜々美は源氏名)「洗脳編」では、留奈の良き相談相手として登場した彼女。けれど、話が進むにつれて“レター先生”という占い師に心酔していることが判明し、留奈はもちろん読者を絶望させたキャラクターでもある。

 また、実は40代という江美だが、人生の中盤戦を迎えているにも関わらず、自分の人生はもちろん、意思決定の全てを占い師に委ねているという危なかっしさが漂う。そんな彼女は、占い師の導きによって地元に戻りスナックで働くことになる。

 「洗脳編」では、占い師にマインドコントロールされているという意味で、推し活文化とは違った角度からの“洗脳の象徴”として描かれていた江美。留奈と違い、現実と向き合うことはおろか、まるで10代から時が止まっているかのようにフワフワとした彼女を見ていると、「洗脳編」とはまた違った恐怖に襲われる。

 それは、無情なる時の流れ、そして思考停止で生きているとツケが回ってくること.........。本章には、そんな人生の教訓めいたものを、誰に言われるわけでもなく、ただ自分自身がじわじわと実感する恐怖が蔓延している。だが、本章のタイトルは「What a Wonderful World(この素晴らしき世界)」。身をもって体感した人生のツケ、そして絶望の果てにこの世界は江美の目にどう映るのか?

 シーズン1とは一変して、“静かな恐怖”が付きまとう『明日、私は誰かのカノジョ』シーズン2の放送を楽しみに待ちたい。

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