『鬼滅の刃』炭治郎はなぜ柱になれなかった? その条件と“お館様の意図”を考察

『鬼滅の刃』炭治郎はなぜ柱になれなかった?

「柱」に導かれると同時に、「柱」を導く炭治郎の剣

 ただ、その一方で、もしかしたら――と思うこともある。それはつまり、お館様はあえて、炭治郎を「柱」にしなかったのではないだろうか、ということだ。

 そう、炎柱・煉獄杏寿郎や音柱・宇髄天元、そして、兄弟子でもある冨岡義勇との関係を見ても明らかなように、炭治郎の潜在能力は、頼れるメンター(指導者)との共闘の中でこそ引き出せるものであり(さらには、甘露寺蜜璃や時透無一郎らの例を出すまでもなく、メンターの側にも良い影響を与えるものであり)、そのことをお館様は見抜いていた(だから、最後まで「柱」にはしなかった)、ともいえなくはないのである。

 そして、炭治郎の方でも、「柱」への昇格は“目標”ではなかった。彼は、妹を人間に戻し、鬼のいない平和な世界を取り戻すことさえできれば、階級などどうでもよかったのだ。

 いずれにせよ、この種の集団バトル漫画では、主人公が組織の中で成り上がっていくことで得られるカタルシスを重視する場合も少なくないのだが、吾峠呼世晴が描きたかったのはそういう形の成長ではなかったということだろう。

※「鬼舞辻」の「つじ」は一点しんにょう、「禰豆子」の「ね」は「ネ+爾」、「煉獄」の「れん」は「火+東」が正式表記となります。(筆者)

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