『鬼滅の刃』日輪刀はなぜ鬼を斬ることができるのか “異能をもって異能を制す”刀鍛冶の力

『鬼滅の刃』日輪刀はなぜ鬼を斬れる?

※本稿は、『鬼滅の刃』(吾峠呼世晴/集英社)のネタバレを含みます。同作を未読の方はご注意ください。(筆者)

 本日4月16日(日)、テレビアニメ『鬼滅の刃』刀鍛冶の里編の第二話が放送される。そこで本稿では、その「刀鍛冶」について考えてみたいと思う。

鬼殺隊の剣士たちを陰で支える存在

 『鬼滅の刃』の主人公は、竈門炭治郎。鬼にされた妹の禰豆子(※「禰」は「ネ+爾」が正式表記)を人間に戻すため、政府非公認の鬼狩りの組織「鬼殺隊」に入隊した少年だ。

 通常、鬼殺隊の剣士は、育手(そだて)と呼ばれる指導者のもとでそれぞれの「呼吸法」を会得し(炭治郎の場合は「水の呼吸」)、「日輪刀」という特殊な刀で鬼を狩ることになる。日輪刀は、太陽に最も近い「陽光山」の砂鉄と鉱石を原料にしているため、日の光に弱い鬼を斬ることができるのだ。

 なお、各剣士には担当の刀鍛冶がつき、炭治郎には、鋼鐵塚蛍という少々風変わりな(だが、腕は確かな)刀鍛冶がつくことになる。

日輪刀はなぜ鬼を斬ることができるのか

 さて、ここであらためて考えてみたいことがある。それは、なぜ日輪刀は鬼を斬ることができるのか、ということだ。

 確かに、(前述のように)日輪刀の原料は、鬼の弱点である日の光をふんだんに浴びた砂鉄と鉱石であり、それだけでも充分説得力はある、といえなくもない。また、剣士たちが刀を振るう時に使う呼吸法は、人間の潜在能力を最大限に引き出し、スーパーナチュラルな存在(=鬼)と対等に戦えるようになる技だともいえよう。

 しかし、私は、それらにもう1つ、理由らしきものをつけ加えたいと思う。それは、“鬼が作った刀だから鬼を斬れる”ということだ。

刀鍛冶もまたある種の“オニ”である

 「鬼」というのは、単なる妖怪の呼称ではない。

 鬼とは、“中央”に対する“周縁”の存在――たとえば、時の政権に抗う地方の豪族や、法や秩序の“外”にいるアウトサイダーたちのことをも意味していたのである。

 そして、これが最も重要なのだが、人里離れた山の中で暮らす技能者たちもまた、「オニ」であると考えられていた。そう、大量の火を操り、刀という破邪の力を持った武器を生み出す刀鍛冶たちもまた、かつてはある種の超能力者――「オニ」だったのである。つまり、ここに、“異能をもって異能を制す”という原理が成立する。

 じっさい、『鬼滅の刃』の第14巻、上弦の鬼に襲われ、血まみれになりながらも、一心不乱に刀を研(と)ぎ続ける鋼鐵塚を見てみるといい。「鬼気迫る」という言葉があるが、その姿はまさに“鬼”であるという他ないだろう。

 だが、この“鬼”たちには、自分ではない“誰か”のことを思いやる温かい心があるのだ。そして、その心があるからこそ、彼らが闇に堕ちることはないし、前線で戦う剣士たちに力を与えることもできるのだ(記憶をなくしていた霞柱・時透無一郎が“覚醒”した要因の1つは、亡き刀鍛冶・鉄井戸の想いが彼に伝わったからでもあった)。

 いずれにせよ、社会現象的な人気を博した「無限列車編」同様、今回の「刀鍛冶の里編」にも見どころはたくさんあるのだが、まずは、そんな人の心を持ったオニたち――刀鍛冶の戦いに注目していただきたいと思う。

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