紙の値上がりが出版に大きな影響  業界関係者アンケートで「価格に転嫁」「ページ数を減らす」が半数以上

紙の値上がりが出版に大きな影響

 2022年から2023年まで、出版に携わる人の半数以上が、紙代の値上がりが「あった」と回答――。株式会社インターカラーが出版業界人327名を対象にしたアンケートを調査で、ロシアのウクライナ侵攻や長引くコロナ禍の影響で、紙の値上がりが出版業界に大きな影響を与えている実態が浮き彫りになった。

 今回の調査は、「紙の値上げの状況と紙媒体広告への影響」と題し、新聞、雑誌、フリーペーパーなどの執筆・編集、出版・発行、印刷、製本などに携わる全国の327名(男性272名、女性55名)を対象に実施。調査期間は2023年2月16日~2月20日に行われた。

 回答によれば、紙代の値上がりが「あった」と回答したのが52.2%で、「3回以上あった」が22.9%にも及んだ。同社の調査では、2022年の紙の値上がり率の平均は24.3%で、著しい値上がりが続いていることがわかる。

 この傾向は今年に入っても変わらないようで、2023年にも紙代の値上げの予定が「あると聞いている」人は44.0%にもなった。そして、2022年に紙代上昇の影響が出版業に「影響したと思う」と答えた割合は実に67.6%にも及び、2023年にも「影響すると思う」が73.7%、うち44.3%は「大きく影響すると思う」と回答した。

 こうした紙代の値上げは、今後、出版物の価格に転嫁されることになると予測される。しかし、食料品や電気料金などあらゆる分野で値上げが続く中で、本や雑誌は嗜好品であるため、真っ先に買い控えの対象とされる可能性が高い。紙代の値上げは出版業界にダメージを与えかねず、今後の動向が注目される。

 紙の値上げの影響が大きい中で、雑誌の製作費の補填に不可欠なのは広告費だが、近年は雑誌への広告出稿は減少が続く。アンケートでは「広告料金を上げる」という対策をとったのが12.2%、「広告スペースを増やす」がわずか8.6%で、比較的少数であった。

 広告収入を増やせない理由として35.3%が「紙媒体は広告費が高いイメージがあり、敬遠されてしまうから」と回答しているが、雑誌のページをめくると明らかに広告数は減少している。今さら広告に頼るのは現実的ではないと思われる。

 出版社によっては、紙質を落としたり、印刷の質を下げたりして経営努力を行っている例もみられる。ただ、昨年に刊行されたあるムック本で、おそらく印刷代を削減するために従来使っていた大手印刷会社から印刷所を変更したせいか、前号と比べて写真の色合いが明らかに悪化していた例もあった。近年は紙媒体にはネットにはない特別感を求める読者も多く、このコストカットは明らかに悪手だったとみるべきだろう。

 高騰する紙代に合わせて何かをコストカットするか、あるいは値上げで対応するか。出版社にとって、苦悩と綱渡りの状態は当面続くと考えられる。

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