AIに書かせる盗作問題が勃発? アメリカの SF雑誌が新作募集を打ち切りするまでに発展


 アメリカのSF雑誌「Clarkesworld Magazine」が、新作募集を打ち切ることを発表した。原因は「AIが書いた盗作」の投稿が増加しているためである。2023年2月で既に500件を超える盗作が投稿されており、そのほとんどが手軽に賞金を稼ぐ目的だそうで、事態は極めて深刻といえる。現時点で募集の再開時期は未定となっている。

 AIの芸術分野の進出は目覚ましい。これまで扱うのが難しいとされたイラストレーションの分野は言うに及ばず、原稿執筆にも及んでいる。とりわけ、2022年11月30日にプロトタイプが公開されたChatGPTは、従来のAIを超えるクオリティで話題になっており、小説などの創作を行うこともできる。「Clarkesworld Magazine」に応募されている盗作も、ChatGPTを使ったものが多いようだ。

  ChatGPTの凄みは、「恐竜が生きている世界で男女が活躍するファンタジー小説を考えてください」などと入力すれば、実際に物語を作成してくれる点にある。すでにビル・ゲイツはChatGPTに詩を生成させるなど、自身の楽しみのために活用していると話す。すでに、アメリカのニュースメディアのバズフィードは一部の記事をAIに製作させている。AIの生成物はまだぎこちなさがみられるもの、人間が手を加えれば十分に使えるレベルに到達しており、実用の域に達しているとみるべきである。

 AIの創作物をどこまで盗作と考えるか、線引きは非常に難しい。プロットをAIに作成させ、具体的な肉付けを人間がすることは既に行われている。AIに描かせたイラストで同人誌を作っているイラストレーターもいる。対して、急速なAIの進歩に出版社が追い付いていないのが問題である。

 少なくとも、新人賞の審査にかかわる編集者の負担は大きくなると思われる。盗作の問題は、AIが進出する前、アナログで紙に小説や絵を描いていた時代からたびたび起こってきた。漫画賞の受賞作が後で盗作と発覚し、賞を取り消した事例も存在する。大手出版社の編集者によれば、盗作、模写、模倣の痕跡がある作品は、常に何件か応募されているのだという。

 それでも編集者が目利きであるため、怪しい作品は審査の俎上に載せる前に弾かれてきた。アナログの時代は「例えば漫画ならペンの使い方が不慣れだったり、キャラはうまいのに背景が稚拙だったり、ストーリー展開が不自然だったりと、盗作であるかどうかは経験と勘である程度見分けられた」そうだ。

 しかし、今やデジタルが当たり前となった時代、AIが作成した作品が「盗作であるかどうか見分ける自信は、正直ない」という。最大の対策は、将来的には「AIにAIの作品と見抜かせる」ようなものだが、果たしてそれが可能なのか。現時点では稚拙さが感じられる表現も、今後のデータの蓄積でAIが進化すれば、人間の妄想を超えた作品を生み出す可能性もある。

 AIは便利なものだし、パソコンやスマートフォンの普及以上のインパクトで日常生活を一変させる可能性もある。しかし、創作となればまた話が違ってくる。ChatGPTの急速な普及に伴い、今後、出版社の新人賞はシステムの再考を迫られる可能性があるだろう。

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