OKAMOTO’Sオカモトショウ連載『月刊オカモトショウ』
OKAMOTO’Sオカモトショウが語る“いま読むべき漫画”たち 「マンガ大賞2023」ノミネート作品を徹底紹介
ロックバンドOKAMOTO’Sのボーカル、そして、ソロアーティストとしても活躍するオカモトショウが、名作マンガや注目作品をご紹介する「月刊オカモトショウ」。今回は、オカモトショウが審査員をつとめた(!)「マンガ大賞2023」のノミネート作品を中心に、いま注目すべき作品を独自の視点でピックアップします!
豊作の「マンガ大賞2023」ノミネート作品
——まずはショウさんが審査員をつとめた「マンガ大賞2023」のノミネート作品のなかから、特に注目の作品を選んでいただきました。1作目は『光が死んだ夏』(モクモクれん)。男子高校生の“よしき”が体験する怪事件を描いた青春ホラーです。
まだ2巻までしか出てないんですけど、すごく斬新ですね。ネットホラーというか、2ちゃんねる(現・5ちゃんねる)の“洒落怖”(“2ちゃんねる”オカルト板のスレッドの総称)みたいな感じと、日本の村社会の雰囲気、現代的なLGBT+Qの要素が混ざってて。擬音の使い方も凝っていて、ちょっと稲川淳二さんの怪談とつながるようなイメージもあるんですよ(笑)。
ーーもともとSNSで発信されて話題になった作品だというのも、今っぽくていいですね。
そうなんですよ。なおかつ、いわゆるネットマンガっぽい稚拙さがまったくない。ビジュアルもストーリーも、注目していきたい作品ですね。
——続いては『正反対の君と僕』(阿賀沢紅茶)。元気いっぱいだけど周りの目を気にしてしまう女子・鈴木さんと、自分の意見を言える物静かな男子・谷くんの恋愛を描いたラブコメですね。
とにかく作話が上手くて、キュンキュンきちゃいました(笑)。普段、こういうジャンルはほとんど読まないので、「ラブコメとしてどうだ」という分析はできないんですけど、単純に日常を描いたマンガとして読んでも、すごく優れていると思います。自分のなかでは『プリンセスメゾン』(池辺葵)とか『ひらやすみ』(真造圭伍)と似たような感覚があって。読んでいるだけで、自分の生活がちょっと幸せになるというか。
——そして『劇光仮面』(山口貴由)は、大学時代、特撮愛好サークルに所属していた男性が主人公。ショウさんが好きな『シグルイ』の山口貴由さんが手がけています。
このマンガはやばいです。『シグルイ』の人が特撮モノをやると、こんなに面白いくなるんだ……!って。特撮にフォーカスしながら、どこまでリアルを感じられるか、という実験をやっているというのかな。第二次世界大戦の話だったり、円谷プロだったり、現実のことも描かれているんだけれど、全体としてはフィクションになっていて……って、この説明だとよくわからないですよね(笑)。想像力の果てにもうひとつの宇宙を生み出すくらいのスケール感があるし、続きが気になります。おそらく山口先生が描きたい展開まではまだまだたどり着いていないし、今後も楽しみです。妙に生々しい絵柄もいいし、天才ですね。
——さらに、落語をテーマにした『あかね噺』(原作:末永裕樹/作画:馬上鷹将)、文明崩壊後の近未来の日本を舞台にした『日本三國』(松木いっか)も、イチオシの作品だと。
『あかね噺』は、落語家の父親を尊敬している主人公の女の子が、真打を目指して奮闘するストーリー。『昭和元禄落語心中』(雲田はるこ)など、落語をテーマにした素晴らしい作品はいくつかあるけど、『あかね噺』は利発な主人公がとても魅力的だし、こういうマンガが「週刊少年ジャンプ」で読めるのもいいなと。雑誌で連載から読んでいるマンガ好きとしては、ジャンプに楽しみな作品が増えたのがうれしいですね(笑)。
『日本三國』は前にもこの連載で紹介しましたが、ずっと面白いですね。このご時世に本当に挑戦的だと思うくらい、目先の人気にとらわれずじっくり描いている作品なので、「マンガ大賞」にもノミネートされて、この作品の良さがたくさんの人に伝わってホッとしてます(笑)。松本先生はアシスタントをつけずに一人で背景まで全部描かれているみたいで、いまは隔週連載になっているんですよ。最低でも30巻くらいやらないと描き切れないスケールのマンガなので、とにかく長く続いてほしい。特別に応援してます!
——そのほかのおすすめ作品は?
たくさんあるんですよ、それが。まず『ヒソカニアサレ』(原作:古町/作画:きむ てみょん)。以前紹介した『レモンエロウ』の作者の古町さんの新作なんですけど、これが“アワビの密漁”をめぐる話なんです。それだけでも興味を惹かれるんですけど、今の日本の地方の過疎化や貧困のことも描かれていて、読み応えが抜群。主人公は若い男で、漁師の父親の仕事を手伝ってるんだけど、それだけでは生活できなくて、コンビニでバイトしてるんです。夜、バイトしているときにコンビニから暗い海を見るシーンがあるんだけど、社会問題にアートとして切り込んでる感じがすごくいいなと。マンガらしいエキサイティングな展開もあるし、今後に期待ですね。
あとは、「週刊ヤングジャンプ」で連載している『イリオス』(円城寺真己)もいいですよ。ギリシャ神話の世界観とヤクザ同士の抗争を組み合わせてるんですけど、「このブッ飛んだ設定で、どこまで走れるんだ⁉︎」という興味があって(笑)。今のところすごく面白いし、今後も期待大ですね。なぜか全員、美男美女で絵がキレイなのも素敵なところです。
——ショウさん、チェックしてるマンガの幅がめちゃくちゃ広いですね、相変わらず。
そうですね(笑)。そういえば最近、スポーツマンガもけっこう読んでいて。次回はサッカー漫画『ブルーロック』の話から始めたいと思います!