藤子不二雄(A)不朽の名作『まんが道』 貴重な原画が多数見られる展示会レポート トキワ荘の魅力紹介も

 「豊島区立トキワ荘マンガミュージアム」で、11月12日より「藤子不二雄(A)のまんが道展」が開催されている。

 『まんが道』は藤子不二雄(A)と藤子・F・不二雄がモデルの満賀道雄と才野茂の2人を主人公に、漫画に情熱を傾ける若者の成長物語が描かれる名作漫画だ。藤子(A)は、今年4月6日に88歳で亡くなったが、『週刊少年チャンピオン』で連載開始した『まんが道』は、掲載誌を替えながら足掛け40年以上、生涯の半分をかけて描いたライフワークと呼ぶにふさわしい作品である。

『まんが道』の単行本も展示。

  さて、『まんが道』は事実上の藤子(A)の自伝的な漫画であり、一部フィクションを交えつつも、戦後間もない頃から高度成長期における漫画界の貴重な記録にもなっている。同作において重要な舞台といえるのが、言わずと知れたトキワ荘である。老朽化に伴い、1982年に惜しまれつつ解体されたが、2020年、当時の写真や資料を参考に忠実に再現された「豊島区立トキワ荘マンガミュージアム」が誕生。漫画家たちが切磋琢磨したトキワ荘の部屋が再現されている。

ミュージアムは往年のトキワ荘の外観だけでなく、壁面の汚れまでリアルに再現されている。昭和30年代にタイムスリップしたかのような光景だ。
手塚治虫が退去した後に、藤子不二雄(A)と藤子・F・不二雄が生活した14号室。
両側の部屋から、漫画家が現れそうなくらいリアルな廊下。
在りし日のトキワ荘の炊事場も再現されている。

  実は今回の展示会の構想は、ミュージアムが開館する前からあったという。豊島区の高野之夫区長によれば、ミュージアムが完成に近づく2020年6月、生前の藤子(A)に面会した際、最初に『まんが道』の企画展の開催を進言したそうだ。ところが、藤子(A)は寺田ヒロオや手塚(※塚は正式には旧字体)治虫に憧れてトキワ荘に入ったことを振り返りつつ、「寺田先生、手塚先生より先に私の企画展はできません。お二人の展示が開催されてから考えます」と話したという。

  高野区長は、「藤子(A)先生の思いやりと優しさに深い感銘を受けた」と話す。そして、「藤子(A)先生が元気なうちに開催したかった」と残念がるが、満を持しての開催にふさわしい充実した展示になっている。

 何といっても、『まんが道』の直筆の原稿が14点も展示されているのが見どころだ。『まんが道』の第1話である『あすなろ編』の扉絵などからは、藤子(A)のペンタッチをつぶさに見ることができる。また、藤子(A)が所蔵していた解体されたトキワ荘の14号室の壁も展示され、ファン垂涎の貴重な歴史資料を堪能できる。

展覧会場入口には満賀道雄と才野茂と一緒に写真が撮れる、撮影スポットがある。
『まんが道』の原画の展示は最大の見どころ。
貴重なトキワ荘の壁は藤子(A)が解体現場からもらい受けたもの。

 なお、ミュージアムの近くには、トキワ荘の漫画家たちが堪能したラーメンが味わえる中華料理店「松葉」もある。読書の秋、『まんが道』の聖地巡礼の旅に、ぜひ出かけてほしい。

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