【ライトノベル最新動向】「ダンまち」シリーズがずらりランクイン! 「アストレア・レコード」シリーズの魅力とは?

「ダンまち」シリーズがずらりランクイン!

 大森藤ノによる「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」シリーズがRakutenブックスのライトノベル週間ランキング(10月10日-16日)で大盛況。『アストレア・レコード1 邪悪胎動 ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 英雄譚』(GA文庫)が10月15日発売ながら7位に入ったほか、このシリーズの続編や別の外伝、そして2023年1月24日発売の正編の最新刊を含む7冊が25位以内に並んだ。

 新米冒険者のベル・クラネルがダンジョンのあるオラリオという街に来て、少女の姿をした神様のヘスティアとファミリアを作り、ダンジョンでの冒険やモンスターとの戦いに挑むというファンタジー。冒険者の少女で、剣姫という二つ名を持つアイズ・ヴァレンシュタインに救われ、その強さに惹かれて自分を鍛え上げ、どんどんと強くなっていくベルの成長を楽しんでいたストーリーに、様々な事情を持った仲間が加わり、他のファミリアとの交流や抗争も重なって膨らんでいく物語世界に、大勢が惹きつけられている。

 「アストレア・レコード」シリーズは、ベルがオラリオに来る前に起こった出来事を描いていく前日譚的な作品だ。アプリゲーム『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか ~メモリア・フレーゼ~』の発売3周年を記念して配信されたシナリオ「偉大冒険譚アストレア・レコード」を、執筆者の大森藤ノが改めて小説に仕立てて全3部作で刊行していく。

 『アストレア・レコード1 邪悪胎動 ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 英雄譚』はその第1弾。本編にも登場するエルフの冒険者、リュー・リオンが所属していた【アストレア・ファミリア】の物語で、誰よりも正義感が強くて快活な女性、アリーゼ・ローヴェルを団長に、見かけは大和撫子だが口を開けば悪口雑言が飛び出すゴジョウノ・輝姫らファミリアのメンバーが、オラリオの平和を脅かす闇派閥(イヴィルス)に立ち向かう。

 ここでクローズアップされるのが、「正義」とは何かという簡単そうで難しい問題だ。冒険者たちを狩り、街の住人も傷つける闇派閥の振る舞いは誰が見ても「悪」で間違いない。その闇派閥を討伐するリューたち【アストレア・ファミリア】の行動は、団長のエリーゼが常に標榜する「正義のため」を地で行くものだと言えなくもない。

 ただ、そうした行為を何のために行っているのかを、エレンと名乗る男の神様に問われ、自己満足に過ぎないのではと詰められて、リューは憤りつつ悩みを抱く。後に明らかとなるエレンの“正体”から考えれば、ただの揺さぶりに過ぎなかったのかもしれない。ただ、そうした「正義」を貫き続けたことが後に、正編でもリューの回想とともに示唆される【アストレア・ファミリア】の悲劇を招いたのだとしたら、いったい誰のための「正義」だったのかはやはり気になってしまう。

 『アストレア・レコード1』の中で、腕に覚えがあるだけに競いたがる冒険者たちを、真っ直ぐな考え方で同じ方向にまとめあげるリーダーシップを見せたアリーゼの姿も、熱心な「ダンまち」ファンは後に悲劇に見舞われると知っているだけに、ページを繰る手も重たくなる。楽しげな表紙絵とは裏腹の重たいシリーズだ。

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