NMB48 安部若菜「私たちの世代のことを本当にちゃんと考えてくれている」 山崎元『経済評論家の父から息子への手紙』を読んで
2024年1月、65歳で逝去した経済評論家・山崎元氏の最後の書き下ろし作品『経済評論家の父から息子への手紙』(Gakken)。余命3ヶ月を宣告された山崎氏が、これからの時代を生きるご子息、そして幅広い世代の読者に向けて、お金、人生、幸せについて執筆した。わかりやすく明瞭なアドバイスと、深い愛情が感じられる語り口で、発売2週間で7万部突破するほどのベストセラーとなっている。
そんな同書を「ぜひ若い世代になるべく早く読んでほしい」と評するのが、NMB48のメンバーとして活躍するアイドルの安部若菜氏だ。高校時代に株を始めるなど投資に詳しく、小説や写真集を刊行するなど多方面で活動している彼女は、本書に大きな感銘を受けたという。その理由についてじっくりと語ってもらった。
私たちの世代のことを本当にちゃんと考えてくれている
ーー安部さんは金融庁のイベント「新しいNISA×未来プロデュース」に出演するなど、投資に詳しいアイドルとして知られています。改めて投資に関心を持ったきっかけを教えてください。
安部:通信制の高校に通っていた際に、投資部という部活に所属したことで興味を持ちました。ちょうど一期生でみんなが初めてのなか、実際に株式投資をしてお互いに成果を報告しあったりしていました。それまでは知識も経験も全然なかったのですが、自分でもやってみればできるんだと思って、少しずつ勉強を始めました。
ーー昨今、新NISA開始もあって世の中で投資に対する関心が高まりつつありますが、安部さんと同じ20代前半でもやはりそうでしょうか。
安部:それはすごく感じます。私が「NISAなどの投資をやっている」と言うと、周りの子たちから「教えてほしい」とよく言われますね。ただ興味はあるものの、難しそうで一歩が踏み出せないという子がすごく多い印象です。
ーーそういう方にぜひ勧めたいのが、本書『経済評論家の父から息子への手紙』ですね。安部さんの率直なご感想を教えてください。
安部:まず一番の感想は、すごく読みやすいことです。経済書なんですが、タイトルの通り、父から息子へ向けた手紙のように書かれています。私たちの世代のことを本当にちゃんと考えてくれているんだなということが伝わってきました。
また、私たちの世代はこれからどのように働いていくかという問題に直面しているのですが、企業に就職するという選択肢だけではなく、起業する、ベンチャー企業に参加する、といった新しい働き方も色々とあるんだということを教えてくれて、その上で大切にするべきことが詳しく書かれていました。そんな本は今まで読んだことがなかったので、すごく参考になりました。
ーーこの本は投資について非常にわかりやすくコンパクトにまとめられていると同時に、若い世代がこれから働いて生きていくためのエールが込められていますね。特に心に留めておきたいと思った箇所は。
安部:一番印象に残った言葉は「他人と同じことを恐れよ」という一文です。自分自身、将来はどのようなキャリアを歩もうかを考えている真っ最中なので、その方向性を決める上でも指標としていきたいと思いました。
人と違うことがしたいというのは、私自身が昔から思っていたことでもありました。私が小説や落語、投資など、さまざまなジャンルにチャレンジするのも、そういう意思の表れかもしれません。だからすごく共感したんです。
ーー安部さんはアイドルと投資は似ていると考えているそうですね。確かにアイドルは一握りの人しかなることのできないお仕事で、さまざまな面でリスクもあります。
安部:アイドルはハイリスクで、リターンもなかなか読めない部分がありますね。もちろんアイドルの定石もある。でもリスクを取って新しいことにチャレンジして、人と違う存在になればなるほど、いろんなチャンスが得られる。そういう意味では通じる部分もあるのかなと思いました。そこで安定を求めるのも一つの考え方ですが、私はリスクを取っていきたいですね。
20代の前半でこの本に出会えたのは、本当に幸せなこと
ーー著者の山崎元さんは長年、全世界株式のインデックスファンドに投資するというシンプルな方法を主張してきました。現在、新NISAでもその方法が一般的に知られつつありますが、その意味で山崎さんが果たした功績は大きいように思います。安部さんはどう捉えていますか。
安部:私は積立投資はしていたんですけど、全世界株式の割合はどちらかというと少なかったんです。でも改めて、投資の原則の長期・分散に照らし合わせて考えてみると、確かに全世界株式が一番効率がいいなと思いました。この本の投資の話はすごくシンプルで難しいことが一つもないからこそ、同世代にしっくりくるように思います。ぜひ周りに勧めたいです。
ーー普通の人が普通にできることに絞って書いてある。そういう意味でも入門書としても最適ですね。
安部:そうですね。私は株をやってきましたが、持ち株の値が下がってしまうとソワソワするようなことも多かったんです。この本を読んで改めて、長期・分散・低コストで続けて、メンタルを安定させる重要性を学びました。それはこれからどんな投資をする時にも、心に刻んでおくべきことです。この本のなかでも、特に重要なことだと思います。
ーー後半部分の第三章「もう少し話しておきたいこと」、第四章「小さな幸福論」では、山崎さんが息子さんに伝えたい人生訓も含まれていて、普通の投資本と大きく異なっています。人間関係やモテ、仲間内での評価についてなどが書かれていますが、安部さんが学びになったことはありますか。
安部:働き方のコツはすごく感銘を受けるところが多くて、本当に全ページをメモに取りたいくらいでした。特に年齢ごとのキャリアプランが印象に残りました。私は今23歳なんですが、意外と自分にある時間は少ないなと初めて感じました。
ーー28歳までに職業を決めて、35歳までに人材価値を確立する、45歳からセカンドキャリアについて準備するとありましたね。若いうちからそれを知って実践していくと、人生が豊かになっていくと感じました。
安部:20代の前半でこの本に出会えたのは、本当に幸せなことだなと思います。私自身、まだ将来のことを考える時間はあると思っていたんですが、生涯のキャリアを俯瞰して考えると、急ぐに越したことはないと思うようになりました。1日でも早いうちに、この本を読めてよかったです。
あと、3章〜4章で心に残ったのが、自分の嬉しいことを言語化するべきだと書かれていたことでした。「自分の嬉しい瞬間っていつだろう」と一旦本を閉じて考えてみたんですが、なかなか思い浮かばなくて。でも自分の嬉しいこと、何に幸せを感じるかは絶対に早いうちに見つけておいたほうがいい。それは自分の人生のために必要だなと思いました。日常から意識するだけでも、変わってくると思います。
仲間内の賞賛にはすごく価値があるというお話も、やはり近しい仲間は自分にとって鏡でもあるので、すごく納得がいきました。承認欲求は誰しもが持っているからこそ、うまく付き合っていく必要があるし、その意味では複数のコミュニティに属するのも良いことだと思います。私自身、学校とは別にNMB48にも所属していたことが救いにもなってきました。もちろん、人と比べて落ち込むこともたくさんあるけれど、いろんな場で少しずつ承認欲求を満たすことで、ときには潔く諦めることもできるようになるし、それが幸せな人生の秘訣なのかもしれません。