少年誌初のBL漫画『ババンババンバンバンパイア』作者が語る、“ブラッディ・ラブコメ”の作り方「人物相関図をぐちゃぐちゃにさせる」

『ババンババンバンバンパイア』作者が語る

「葛藤や苦労は全くない」少年誌でBLを描くこと

ーー『ババンババンバンバンパイア』といえば、BLと書いて“ブラッディ・ラブコメ”と読ませる秀逸なキャッチコピーが話題ですが、これはどのようにして生まれたのでしょうか。

奥嶋:それはもう担当編集さんがつけました。

担当編集:やっぱり「別冊少年チャンピオン」が少年誌なので、ボーイズ・ラブとはっきり言ってしまうと読者の間口が狭くなってしまうのかなと懸念があったんです。一方で、少年誌初のBLマンガができるという期待もあったので、BLというワードは残したいなと。そうなると、あとはもう駄洒落ですよね。吸血鬼が出てくるからBはブラッディで、Lはラブコメだよなって。実は“馬鹿ラブコメ”という案もありましたが(笑)やっぱり吸血鬼の話なので、“ブラッディ・ラブコメ”が一番合っていますよね。

ーー少年誌でBLマンガを描くのは挑戦的なことだったと思うのですが、連載に至るまでに苦労したことなどはありましたか?

奥嶋:全くありませんでした。以前、「BLやりませんか?」と突然言われて「カチCOMI」で『同棲ヤンキー赤松セブン』の連載をスタートさせたのですが、その時もBLに対して抵抗感がなくて、むしろ新しいジャンルで面白そう! って感じでスッといけたんですよね。だから、僕の中で少年誌だからという葛藤や苦労は全くなかったです。それこそ吸血鬼がテーマの作品なので、吸血鬼って女性が好きだから女性の血を吸うのではなく、そもそもみんなの血を吸う生き物だし、それなら男性の血も吸うよね! みたいなことを考えていました。

“18歳童貞の血”に隠された裏話

ーー蘭ちゃんが好むのは“18歳童貞の血”。美少年や成人男性など、色々な選択肢があったにも関わらず、あえてこの設定にしたのはなぜでしょうか。

奥嶋:吸血鬼は処女の血を好む、みたいなところあるじゃないですか。なので、それを男に置き換えたら童貞になるなと。年齢に関しては、やっぱりラブコメとしての一面を描きたかったので、高校の3年間があれば青春や恋愛の話ができると思って、15歳〜18歳で設定しました。

 ーー童貞のキャラクターって特徴を掴むのがすごく難しそうに感じるのですが、モデルや参考にしている人はいますか?

奥嶋:モデルは僕の息子ですね。まだ10歳なんですけど本当に無邪気で。だから李仁くんは実年齢より少し幼い感じになっているかもしれないですね。あと、男はみんな元は童貞ですから(笑)。だから当時の自分や高校時代を思い出して、あの時はアホだったな.......とか思いながら描いています。


ーー蘭ちゃんはいかがですか?

奥嶋:特にモデルはいないです。それこそ、僕の中の吸血鬼っていうイメージで描いているキャラクターですね。

ーーキャラクターといえば本作のヒロイン・葵ちゃん。蘭ちゃんにとっては目の上のたんこぶですし、彼女の立ち位置は少し複雑ですよね。


奥嶋:BL<ボーイズ・ラブ>として読むと、やっぱり蘭ちゃんと李仁くんの絡みが見たいじゃないですか。そうなると、必然的に彼女は邪魔な存在になるので、読者から嫌われて欲しくないなと思いながら気をつけて描いています。

秀逸なパロディと歴史ギャグ

ーー作中にはパロディシーンがよく登場しますよね。

奥嶋:そうですね。僕はハロルド作石さんのファンなのですが、彼も藤子不二雄先生やつのだじろう先生のパロディをやられていて。作中ではまさにあの感じをやっているんですよね。勝手に“作石ズム(サクイシズム)”って呼んでいるんですが(笑)。

ーー蘭ちゃんは「9」や「Q」と描かれたアイテムをよく身につけていますし、マイケル・ジャクソンも好んで聴いていますよね。ついつい彼の細かいところまで見てしまいます。

奥嶋:彼のTシャツの「Q」は、ネームの時に顔ではなく、“吸血鬼”の意味で丸チョンで英語のQと描いたのが始まりですね。マイケル・ジャクソンに関しては、実は彼も吸血鬼としてこの世に生きていて、蘭ちゃんと友達という設定を勝手に思い描いています。それこそ、1巻で「マイケルは生きていた」って見出しの新聞が登場しているんですよ。

ーー蘭ちゃんとマイケル・ジャクソンが友達。夢がありますね(笑)。作中では蘭ちゃんと歴史をうまく融合させたギャグや小ネタがたくさん登場しますよね。

奥嶋:せっかく吸血鬼で長生きなんでね。普通に450年生きてきましたっていうよりも、しっかりと表舞台で活躍して歴史に関与していた方が面白いなっていう発想です。彼を森蘭丸にしたのは、歴史上の人物で美少年で誰かいたかな? っていうのと、織田信長が男色家だったみたいな話があったので......。男色家の話とBLを結びつけるのは良くないなと思うのですが、そこから着想を得ました。

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