【ライトノベル最新動向】エピソード一段落の『薬屋のひとりごと』『わたしの幸せな結婚』新刊がランキング上位に

 エピソードに決着が付く最新刊が幾つか入ったRakutenブックスのライトノベル週間ランキング(8月8日~14日)。2位の日向夏『薬屋のひとりごと12』(ヒーロー文庫)は、西都へと出向いていった薬師の猫猫と、美貌の皇弟で猫猫のことを気に入っている壬氏を巻き込むように、西都を仕切っていた玉鶯が暗殺されて後継者をめぐる騒動が勃発。猫猫の身にシリーズでも最大級と言えそうな危険が迫る。

 玉鶯には3人の息子がいて、普通だったら長兄の鴟梟が普通に継ぐべきところを、自分は無頼で跡継ぎなんて似合わないとその気を見せない。次男の飛龍も名前に似合わず文官タイプで統治者には向かないと及び腰。三男の虎狼は聡明で腰も低いがあまり権力には興味がなさそうだった。奪い合うというより押しつけ合うような状況で後継者争いなど起こるのかというと、誰かに後を継がせるには誰かが邪魔になるらしく、不穏な動きが相次ぎ猫猫にも命を奪われそうになる。

 いったい誰が黒幕かといったミステリーらしい展開があって謎解きを楽しめる上に、猫猫の周囲に顔を出しては馴れ馴れしい態度で食べ物やお菓子を巻き上げていく不思議な存在だった雀さんという女性が、意外な姿で驚くような活躍を見せてサスペンス的な面白さも見せてくれる。そんな騒動を経て、西都での一件がいよいよ都へと戻る猫猫と壬氏。待っているのは、かつてのような後宮の事件を猫猫が薬師の知識で解き明かしていく日々なのか、それとも宮中を巻き込む大動乱なのか。まだまだ目が離せないシリーズだ。

 10位に入った顎木あくみのシリーズ最新刊『わたしの幸せな結婚 六』(富士見L文庫)も、ずっと続いてきた敵との戦いに決着が付く節目の巻となった。

 継母と妹に虐げられて育った薄幸の女性、斎森美世が酷薄だと評判の青年、久堂清霞の元に無理やり嫁がされ、すぐに追い出されて路頭に迷うのかと思っていたら、生来の純真さを清霞に見初められ、そのまま良い関係になっていくシンデレラストーリー。そこに、美世の母親の澄美に好意を寄せていながら、帝が命じた政略結婚によって澄美を斎森家に奪われた甘水直という男が、国に反逆を画策して大騒動が持ち上がる。

 甘水の扇動もあって、帝国陸軍でいわゆる怪異を相手にしている特務小隊の隊長をしていた清霞に無実の罪が被せられ、投獄されてしまう。残された美世は果敢にも甘水のところに乗り込もうとするが、そこに清霞を小さくしたような子供が現れ、自分は清霞の式だと言って美世を思いとどまらせる。

 祖父の助けを借り対異特務小隊の隊員たちとも連絡をとって反撃の機会をうかがう美世から立ち上る、清霞のためなら何でもする強さがカッコ良い。一方で、式だからと安心して、清霞とそっくりな子供を連れ歩き「旦那さま」としか呼ばない清霞とは違って「清さん」と呼び、一緒にお風呂に入ろうかと誘いいっしょに寝ようと呼びかけるたび、式が見せる慌てたような態度がとても可愛らしい。その理由は想像のとおり。当初の冷酷なイメージだった清霞とのギャップが面白い。

 そんな美世の活躍もあって一件落着となった物語は、いよいよ迎える美世と清霞の婚礼を経て文字通りの「しあわせな結婚」が描かれることになるのか、まだまだ事件は続くのか。こちらも先が楽しみだ。

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