サッカー選手から文豪まで “ひろゆき論破無双”で振り返る、実在人物の異世界転生作品
ルパン三世や島耕作といった漫画のキャラクターたちが、異世界に転移・転生している続々と登場しているのに続き、実在する人物が転移・転生させられる漫画に注目が集まりそう。論破王として活躍中のひろゆきこと西村博之が、異世界で大活躍する「ひろゆき、異世界でも論破で無双します」が7月13日発売の漫画雑誌「コミックアルナ」に掲載されることがきかっけだが、果たして面白いものになるのか? これまでに刊行された実在人物系の転生コミックから検討してみた。
堀尾正明アナウンサーが「中村俊輔選手が入ってませんね」と言って、解説者の加藤久が「ビックリしました」と答える。2002年に開催されたサッカーW杯日韓大会に出場するメンバー発表を伝えるニュースで真っ先に言及されたように、中村俊輔選手の落選は日本のサッカー史に残るサプライズとなっている。
このメンバー発表で、もうひとつのサプライズだったのがゴン中山こと中山雅史の代表入りだった。「ちょっと調子が落ちているチームを活性化させてくれる人間としてアリだとは思っていた」と加藤はフォローしたが、世間的には中村俊輔選手が背番号10を付けて世界に存在をアピールする場と思っていた日韓大会。そこで10番を背負うことになった34歳のゴン中山は、世間の落胆に反して持ち前の明るさでチームを鼓舞し、ロシア戦での初勝利、そして初の決勝トーナメント入りに貢献した。
元気なゴン。偉大なゴン。ピッチでもベンチでもどこからでもチームの勝利のために全力を傾けるゴンの姿勢は、どんな逆境でも揺るがない。それは、サッカー史上でも屈指のメンバーが揃った掛川高校が相手でも変わりなかった。いやちょっと待て。すでにプロのサッカー選手として伝説の域に達したゴン中山が、どうして高校生相手の試合に出場するのか? 転生したからだ。
大島司の大ヒットサッカー漫画『シュート!』を原作に、外池達宏が描いたスピンオフ漫画『シュート!の世界にゴン中山が転生してしまった件』(講談社)ですでに引退し、解説者をしていたゴン中山はトラックにはねられ、気がつくと高校サッカー部の部員としてグラウンドに立っていた。普通なら驚き慌てるところを、サッカーにひたむきなゴン中山だけあって、目の前にサッカーがあるなら本気になるべきと紅白戦にのぞみ、インターハイ予選に出場する。
そこでゴン中山は、『シュート!』で主役たちが所属していた掛川高校と対戦する。ゴールゲッターの田仲俊彦がいて、テクニシャンの平松和広がいて、スーパーゴールキーパーの白石健二がいて、「天才」久保嘉晴までもが存在する掛川高校にゴンのチームは惨敗。それでも萎えずに「ボコボコにしたる!!」と誓った次の瞬間、またトラックにはねられたゴン中山が目覚めると、今度は浜野高校の医務室で寝ていて、サッカー部員として掛川高校との試合を翌日に控えていた。
前世もゴンで来世もゴン。そんな状況で何度も掛川高校と対戦していくストーリーが繰り広げられる『シュート!の世界にゴン中山が転生してしまった件』は、漫画だからこその突出したキャラクター性を持ったサッカー選手たちが居並ぶ世界にあって、決してひけをとらない存在感を見せるゴン中山というサッカー選手の偉大さに、改めて気づかせてくれる作品だ。
今も現役のキングカズこと三浦知良選手も、W杯の落選後も活躍を続けた中村俊輔選手も、漫画で伝記が描かれるレジェンドとなったが、漫画作品というフィクションの世界で活躍できたのはゴン中山くらい。逆に言うなら実在の人物をフィクションの世界に放り込むなら、強烈なキャラクター性が必要ということだ。