映画公開目前! 小説『ハケンアニメ!』が教え諭す、アニメにとっての“覇権”の意味

 アニメ業界のことを描いた小説では、覇権争いに参加すらできず、企画段階で消えていく作品が幾つもあることを教えてくれる塩田武士『デルタの羊』(KADOKAWA)という作品もある。

 ソフトメーカーに勤めるプロデューサーが、少年時代に読んだファンタジー作品をいつかアニメ化したいと心に決め、何年もかけて原作者を口説いてようやくアニメ化の許可を取り付け、資金のメドもつけてゴーサインを出せそうなところまで行きながら、急な暗雲が立ちこめる。

 資金を中国企業に頼らざるを得なかったり、配信に押されてパッケージが低迷したりといった、日本のアニメ業界が置かれた厳しい状況が盛り込まれたストーリーは、激変する市場環境を知る上で勉強になる。だからといって、オタク的な感覚は市場を狭めるからと排除して立てた企画が得た"覇権”は、本当の意味での"覇権”なのかとも問われる。『ハケンアニメ!』と合わせ読みたいし、同様に映画化されて欲しい小説だ。

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