注目の若手ミステリー作家・楠谷佑 初の長編作品『ルームメイトと謎解きを』刊行
本格ミステリーの書き手として注目を集める若手作家の楠谷佑(くすたに・たすく)氏が、初の長編作品『ルームメイトと謎解きを』(ポプラ社)を11日に刊行した。
楠谷氏は1998年、富山県生まれ、埼玉県在住。高校在学中に『無気力探偵~面倒な事件、お断り~』(マイナビ出版)でデビューし、その後は書下ろし文庫作品で人気を博してきた。軽妙な筆致、ユニークなキャラ造形、確かな構成力で、着々とファンを増やしている。
『ルームメイトと謎解きを』は全寮制男子高で起こる不可解な殺人事件を描いた青春ミステリー小説。私立霧森学院の旧寮「あすなろ館」は、昨年起きた「ある事件」のせいでほとんどの生徒が新寮に移ってしまい、今はたった6人の生徒しか入居していない。
あすなろ館の住人の一人・兎川雛太(とがわ・ひなた)が2年に進級した始業式前日、新たな入居者がやってきた。今年度から学院に編入してきた鷹宮絵愛(たかみや・えちか)。彼は動物にしか心を開いていない変人だが、優れた頭脳の持ち主だった。奇しくも同室になった二人は、最初は反発するも次第にお互いを知っていく――。
しかし、ある日、あすなろ館に向かう途中にある東屋で、学内で絶対的な権力を持つ生徒会長の湖城龍一郎が何者かに殺害された。現場の状況から、犯行が可能なのはあすなろ館の住人だけである。転入生のエチカは湖城から目を付けられていたため、犯人の最有力とされてしまう。雛太はルームメイトの嫌疑を晴らすため、捜査を始めるが――。
主人公コンビのコミカルなやり取りと予想できない驚きのラスト。読後には人が人を傷つけるやりきれなさと、それでも前を向く高校生の確かな友情に心温まる。高校生から大人まで、幅広い年代が楽しめる内容となっている。