「少年ジャンプ+」で絶望感味わう読者が続出! 『タコピーの原罪』が鬱漫画と呼ばれる理由
『SPY×FAMILY』(遠藤達哉)『怪獣8号』(松本直也)『ダンダダン』(龍幸伸)などの大ヒット作を次々と生み出し続ける「少年ジャンプ+」。そんな「少年ジャンプ+」で、最新話が更新されるたびに読者を絶望の底に叩き落とす、とある作品が今大きな注目を集めている。
その名も『タコピーの原罪』(タイザン5)。2021年12月から「少年ジャンプ+」にて連載がスタートした本作は、地球にハッピーを広めるため降り立ったハッピー星人のタコピーが、自分を助けてくれた小学生の少女・しずかちゃんの笑顔を取り戻すために奔走する物語だ。異界の存在が地球人と交流し、不思議な道具や能力を使って問題を解決していくという点はどこか『ドラえもん』(藤子・F・不二雄)を彷彿とさせるが、最新話が更新されるたびに読者からは「救いがない」「しんどい」と絶望的な声が相次ぎ、例えるならば『おやすみプンプン』(浅野いにお)の系譜を感じる作品である。
「少年ジャンプ+」の甲板を背負うホームコメディの『SPY×FAMILY』、王道バトルアクションの『怪獣8号』、そしてバトルコメディの『ダンダダン』とは異なり、”鬱漫画”として明らかに異彩を放っている『タコピーの原罪』。今回はそんな本作が”鬱漫画”と呼ばれる所以を読み解いていきたい。
タコピーの「狂気」
”鬱漫画”と呼ばれる作品の共通点として、読むと思わず気分が滅入ってしまうような何ともいえない読後感が挙げられるのではないだろうか。そんな憂鬱な気分にさせる ”鬱漫画”の要素としてまず欠かせないのが登場人物の「狂気」。そして、本作における「狂気」こそがタコピーなのだ。
タコピーは、先述の通り地球にハッピーを広めるため降り立ったハッピー星人。ファンシーな見た目、そして語尾に「ピ」を付けるタコピーは常に”無邪気な心”でしずかちゃんに寄り添う。ちなみに、しずかちゃんから笑顔が消えた理由は複雑な家庭事情と学校で受けているいじめなのだがタコピーはそれらを全く理解していない。もしも地球人であれば、相手の表情や空気を読んだり、相手の話から事情を察するといったアクションが取れるであろう。だが、異界の生き物であるタコピーにはそれができない。タコピーは「ハッピー道具」といったハッピー星に伝わる優れた道具で”何でもできる”のに、だ。結果的にタコピーはかえって事態を悪化させてしまい悲惨な結果を招く。悪気なく、歪みなく、絶望的な展開へと追い込むタコピーの存在はすがすがしい反面、とてつもない「狂気」を感じる。
各キャラクターが抱える「闇の深さ」
”鬱漫画”の要素として次に欠かせないのが、各キャラクターが抱える「闇の深さ」だ。回想シーンなどで明かされる各キャラクターたちの過去が、とんでもなく衝撃的だったり重すぎる......なんて展開は ”鬱漫画”あるあるなのではないだろうか。
もちろん『タコピーの原罪』の各キャラクターたちも、とてつもない深さの闇を抱えている。まず、タコピーが懐いているしずかちゃんという存在。彼女は、1話からボロボロの衣服を着ており身体中アザだらけ。とても小学生とは思えないほど常に絶望的、そして物憂げな表情を浮かべている。生活が困窮している母子家庭で育ち、さらに学校では同級生のまりなちゃんからは度を超えた過激ないじめを受けているのだ。
しずかちゃんをいじめるまりなちゃんという存在もまた抱えている闇が深い。彼女がしずかちゃんをいじめる理由、それは自分の父親が夜の仕事をしているしずかちゃんの母親に入れ込んでしまい家庭を顧みなくなったからだ。このいじめの背景には、単なる子供たち同士の問題ではなく、根深い家庭の問題がある。