初詣は”神頼み”をする行事にあらず? 東村アキコの“神社仏閣ハウツー漫画”に目からウロコ

初詣は神頼みをする行事ではない?

 新年の恒例行事といえば「初詣」。神様に昨年の感謝を捧げ、新しい一年の幸せを祈願するために神社やお寺に参拝する行事で、毎年欠かさず行くという方も多いはず。だが、こうして年に一度は神社やお寺で神聖な空気を肌で感じたり、願掛けをしているにも関わらず、参拝の意味やルール、そして神々という存在への理解についてはどこか曖昧な方も多いのではないだろうか。今回は、そんな神社仏閣での作法や神々に対する信仰の在り方について、ユーモアを交えておもしろく解説してくれる漫画『稲荷神社のキツネさん』(作画:東村アキコ 原作:町田真知子)について紹介していく。

お稲荷様から学ぶ、お金儲けの真髄

 本作は、旅行代理店勤務のしがないサラリーマン・井上正助が、旅行で訪れた京都の稲荷神社で不思議な白狐と出会うところから始まる。稲荷神社の使いだと名乗る白狐は、賽銭箱に100円を投げ入れ「お金持ちになれますように!」と願う正助に対して、お金を儲ける準備ができていないと指摘する。こうして正助は、不思議な白狐からお金を儲けることの真髄、そして古くから続く神々と人間との関係性や正式な参拝方法などを学びながら夢を叶えていく。

 原作は神託コンサルタントの町田真知子氏が務め、作画は『海月姫』や『かくかくしかじか』『東京タラレバ娘』など、ラブコメディから感動的な自叙伝まで、数々のヒット作を手掛けた東村アキコ先生が担当する。馴染みがないという人も多いであろうスピリチュアルな領域がテーマとなっている本作だが、マスコットのように可愛らしく描かれている白狐がテンポよく鋭いツッコミを入れながら物語が展開するところは読んでいて気持ちが良く、思わず読み進めてしまうような吸引力がある。

「神様は”自分自身”」参拝の概念が覆される金言の数々

 そもそも祈りとは神に対しての宣言であること。だからこそ祈る前に自己紹介をして「なりたいです」ではなく「なります」と完了形で伝えることなど、参拝の指南書のような役割を果たす本作。だが、本作の魅力はそんな”指南書”としての側面ではなく、むしろ従来の参拝の概念を覆してくれるところにある。

 “願いは叶えるためにある 願いを叶えるためにはます自分を信じることが必要なの。ボクたちはそのお手伝いをしているだけ キミがキミ自身を信じるきっかけを作ってるだけ。この世界は八百万の神々の世界ってことはキミもその一部なんだよ。キミが信じるのはキミ自身。” 

 参拝することで願いが叶うのではなく、参拝を通していかに自分と向き合い、そこから自分を信じて行動を起こせるのか......。『稲荷神社のキツネさん』は”神頼み”だけではなく、古より続く神々と私たち人間との関係性を紐解きながら、願いを叶えるための”心構え”を教えてくれるのだ。

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