2022年に主人公を差し置いて”くる”男 『満州アヘンスクワッド』逃がし屋・キリルの魅力とは?

『満州アヘンスクワッド』キリルの魅力

 『進撃の巨人』のリヴァイ兵長然り、『東京卍リベンジャーズ』のマイキー然り、漫画には時に”主人公を差し置いて高い人気を誇るキャラクター”が登場する。もちろん物語は主人公がいてこそだが、主人公にはない破天荒さや圧倒的な力を持つキャラクターが登場すると、読み進めていくうちに主人公よりもつい熱が入ってしまう......といった現象は誰もが一度は経験したことがあるのではないだろうか?

 そんな”主人公を差し置いて高い人気を誇るキャラクター”だが、2021年に「コミックDAYS」から「週刊ヤングマガジン」に移籍した話題作『満州アヘンスクワッド』(原作:門馬司/ 漫画:鹿子)にその片鱗を見せる男がいる。

アヘンを巡る、クライムサスペンス

 アヘンと共に栄え滅びた満州国を舞台にしたクライムサスペンス『満州アヘンスクワッド』。主人公は関東軍の兵士・日方勇(ひがたいさむ)。戦地で右目の視力を失ったことをきっかけに嗅覚が鋭くなった勇は、農業訓練所の奥地でアヘンの原料であるケシが栽培されていることに気付き、家族を養うためにアヘン密造に手を染めていく。そして、勇は謎多き美女・麗華(リーファ)と手を組み、「真阿片」と名付けた純度の高い阿片の密造・販売網の構築、阿片を巡る関東軍や中国秘密結社「青幇」との戦いへと身を投じていくこととなる。

 決して教科書では描かれないような満州の”裏歴史”を題材にした衝撃的な作品で、疾走感溢れるストーリー展開はもちろん、阿片中毒となり屍のように生きる人たちの姿、そして無法地帯と化した街の退廃した空気感が伝わってくるような臨場感溢れる描写が本作の魅力だ。

2022年に”くる”男 キリル・メドヴェージェフ

 物語が進むにつれて勇と麗華は、アヘン売買を生業とする少女・リン、4ヶ国語を自由自在に操るモンゴル人・バータルを仲間に加え「真阿片」の販路を拡大していく。裏社会が舞台ではあるものの、年齢や出身地、そしてバックグラウンドも異なるキャラクターたちが各々の能力を活かして共に戦う姿からは、王道少年漫画を読んでいるかのようなアツさを感じる。

 そんな本作に登場する数あるキャラクターの中でも”主人公を差し置いて高い人気を誇るキャラクター”の片鱗を見せるのが逃がし屋・キリルことキリル・メドヴェージェフだ。ロシア革命の混乱の最中に貧困ゆえに母親に捨てられ、成長してからはスターリン政権下の人民委員部NKVD(ヌカーヴェーデー)で国民の逮捕や粛清を行っていたキリルだが、とある事情で反逆を起こし、現在は裏社会の人間たちの逃走の手助けを行う逃がし屋として暗躍しながら盲目の少女・ナターシャと共に暮らしている。そして、「真阿片」の次なる市場にハルピンを選んだ勇たちとひょんなことから出会い、キリルは青幇とロシアンマフィアの抗争に巻き込まれていく。

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